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映画評 「異動辞令は音楽隊!」 [映画評]

日本アカデミー賞をはじめ多くの映画賞を受賞した「ミッドナイトスワン」の内田英治監督の手による作品。
シリアス路線の前作から打って変わって、今作はコメディタッチ。

鬼刑事と呼ばれ、
ルールを無視した捜査をしていた男が突如警察音楽隊に異動させられる。
音楽隊のメンバーはやる気のないものばかり。
しかし、徐々に変化が現れて・・・

会社であれば不本意な部署、
学校であれば不本意な部活、
をやらされて、最初はまったくやる気なく、周りもダメダメ。
それがあるきっかけで変わり始める。
よくある展開である。
それでも、本作ではわかりきっているストーリーをそれなりに楽しく見せてくれる。
このあたりは監督の語り口のうまさであろうし、
主演の阿部寛さんの力でもあろう。
全体的に面白く観ることができて、まあ、これはこれであり。

ただ、「ミッドナイトスワン」後の作品ということで、
傑作、佳作といったクオリティを期待して観に行くと、「ううむ」ということになってしまう。
主人公が楽器に本気になる過程の説得力が今一つだし、
クライマックスの犯人との対決シーンはもう滅茶苦茶。
コメディとは言っても、ちょっと、ねえ。
邦画を観てよく感じることだが、
「こんなもんでいい」と思える作り手の神経の図太さにはホトホト恐れ入る。
客のことをなんだと思っておられるのだろう。

音楽隊のメンバーについての掘り下げも甘く、ここも残念。
もう一人、二人は背景まで突っ込んで欲しかった。

阿部寛の共演者として清野菜名さん。
「キングダム2」で重要な役を務められ、「耳をすませば」でも主役を演じられる清野さん。
今が旬の女優さんである。
磯村勇斗さん、高杉真宙さんといった人気若手俳優さんのほか、
渋川清彦さん、倍賞美津子さんらが脇を固める。
渋川さん、ここのところ活躍が目立つ。

「異動辞令は音楽隊!」は、それなりに楽しめる映画。
予想どおりに展開していくから安心して観ていられる。
予定調和を超えるものを期待すると肩すかしだが、そこまで期待しなければそれなりに。

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