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映画評 「哀れなるものたち」 ~ いやはや、凄い、エグい ~ [映画評]

ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞、
アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネート。
そうした受賞歴を見ると、名作、感動作、であるように思われるかもしれないが、
本作はそうした一般的な評価とは一線を画している。

いやはや、とんでもない作品である。

主演は、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンさん。
そんなトップ級の女優が、
体を張る張る。
張る張る張る。
ストーンさんは、本作ではプロデューサーも務めているとのことで、
いや、そうでもなきゃ、ここまでやらんでしょう。
ここまでは他の人にはさせんでしょう。

原題は「Poor Things」。
邦題の「哀れなるものたち」は、ほぼほぼ直訳とわかる。
さて、何が、誰が、Poorなのだろう。
男か、女か。
人間そのものか。
束縛する心か、
性欲か。

ネットに掲載されているストーリーはこんな感じ。

不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。
「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。
大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

ストーンさんがベラを演じるのだが、その突き抜け方はいははやなんとも。
絡みのシーンがバンバンあるのだが、
もうあそこまでやられてしまうと、エロくさえもない。
もちろん、そこは製作者の狙いでもあろう。

主人公の女性の成長物語なのだが、
心と身体のバランスが取れていないために、
普通の人間は二十年近くかけて経験していくことをほんの短期間で通過していく。
それゆえ、喜びも悲嘆も大きくなり、
観ている側も揺さぶられる。

歴史に残るような強烈な映画だと思うが、
大オチが残念。
陳腐な復讐のようになってしまうのだが、
それまでの積み上げてきたウイットが吹き飛んでしまうような安易さだった。

にしても、「哀れなるものたち」は凄い。
エグい。
是非観てください、と迂闊に進められない怖さに満ち満ちているが、
映画ファンの皆さんは迷わずどうぞ。
表現者志望の方も奮ってどうぞ。
怖いもの見たさの方もどうぞ。

はじめてのデートで本作を選んでしまったお二人がいたとしたら、
一体どんな未来が待っているのでしょう。

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