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映画評 「罪の声」 [映画評]

本作はグリコ・森永事件をモチーフにした塩田武士さんの小説を映画化したもの。
フィクションとされているが、一定年齢以上の人は誰もがあの事件を思い出すだろう。
事件があったのは1984年から1985年にかけてだから、すでに30年以上前の話になった。
日本中が大騒ぎになった大事件だが、
全然知らない、という人も少なくないだろう。

映画の設定は、
時効になっている事件を改めて清算するために、と新聞社が特集で扱うことになり、一人の文化部記者がそれを担当することになる。
最初は「今さら」と思っているが、だんだんのめり込んでいく。
時を同じくして、京都で穏やかに暮らしていた一人の男性が、自分の声が犯行グループのテープに使われていたことを知る。
一体誰が自分の声を録ったのか、それを知りたいと強く望むようになる。
そして、立場がまったく異なる二人が、それぞれの思いを胸に事件の真相に迫っていく。
という感じ。

新聞記者のエピソードと、自分の声が使われていた人のエピソードが序盤は別々に描かれ、
やがて交差する。
サスペンスとしての興味を持続させつつ、
エンタテインメントとしても楽しめる。
こうした社会派の映画で、最初から最後まで緊張感が保たれる作品に久しぶりに出会った気がする。
しっかり作られていて、満足度は高い。

監督は土井裕泰さん。
映画は「ビリギャル」以来となるが、私はビリギャルもやたらと楽しんだ。
脚本の野木亜紀子さんも、前作の「アイアムアヒーロー」が好きだったから、2人とも私と相性がいいようだ。
もちろん、相性だけとは思わない。

新聞記者役に小栗旬さん。
徐々に事件にのめり込んでいく姿を丁寧に演じられた。
声が使われた男性に星野源さん。
困ったことに巻き込まれそうな感じがはまり役。
小栗さんの新聞社の上司である松重豊さん、古舘寛治がいい味を出していた。

「罪の声」は、邦画の王道を堂々と歩む作品。
期待にたがわぬ良作である。
芸術の秋、じっくり映画を観たい方にお勧めしたい。

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