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映画評 「おらおらでひとりいぐも」 [映画評]

第158回芥川賞受賞作である若竹千佐子の小説を映画化した作品。
主人公は、子育てを終えたところで旦那に先立たれた老女。
一人暮らしをしているが、行く先と言えば病院と図書館くらいで、過去を振り返りながら寂しく暮らしている。
映画では、頭の中に三人の男たちが存在していて、彼らと会話をしながら日々を過ごしている。
一緒に踊ったりもする。
ただし、呆けているわけではない。

監督の沖田修一さんの前作は、やはり老人を描いた「モリのいる場所」。
なんとなく雰囲気が似た作品になった。
ただ、「モリの」ではたっぷり楽しめた私は、今作はどうにも。

なんともはや、退屈だったのである。
ぶっ飛んだファーストシーンをはじめ、
スクリーンの中では、意外とワイワイやっているのだが、私にはまったく響いてこなかった。
できるのは睡魔と戦うことだけ。
この映画が連れてくる睡魔は生易しいものではなく、何度も屈しそうになった。
私は原作未読だが、おそらくその良さが映像化されていないのではないかと思う。

年を取ることの悲しさ、寂しさ、
一面の自由さ、
過去と向き合う喜び、切なさ、
など伝わってくるものもあるのだが、もっと他の伝え方があったのではないか。
映画の最初と最後で、主人公の心持にそれほど変化が生じることが起きたようにも思えなかった。

主演は田中裕子さん。
昨年公開の「ひとよ」でも健在ぶりを感じたが、完全にメインストリームに帰ってこられたようだ。
これからも活躍を期待したい。
若い時代を演じるのが蒼井優さん。
いつか、田中さんと蒼井さんのがっつりした絡みも見てみたい。
亡き旦那役に東出昌大さん。
しっかり仕事ができるように願っている。
主人公の頭の中の声が具現化した存在として、濱田岳さん、青木崇高さん、宮藤官九郎さんが出演されていたが、せっかくのキャスティングが十分な効果を発揮していたようには思えなかった。

私は「おらおらでひとりいぐも」を全く楽しめなかった。
私自身、老境に一歩ずつ近づいていて、心境がわかるところもあったのだが、それと映画的な興奮は別物。
早く終わってくれることを心から願ったが、それはなかなか叶わなかった。

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