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映画評 「スパイの妻<劇場版>」 [映画評]

第77回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作。
銀獅子賞とは、監督に与えられる賞であり、演出が評価されたということになる。
黒沢清監督は、もともと海外の映画祭での評価が高く、
他の作品でもカンヌ映画祭やローマ映画祭で賞を受けている。

映画の舞台は、1940年の神戸。
貿易商を営んでいる夫が国家機密を知り、それをなんとかしようとする。
妻は危険におびえ戸惑いながらも、懸命に寄り添って生きようとする、
といった感じだろうか。

黒沢監督作品にありがちだが、ストーリーは荒唐無稽というか、ややへんてこである。
演劇的な展開であり、「んな奴はいないよ」と言ってしまえばそれまでである。
主人公夫婦の行動も、何をしたいのか突き詰めるとよくわからない。
しかし、そこらあたりを深く突っ込むのは野暮というものだろう。

登場人物のセリフ回しも、なんだか時代がかっている。
舞台が戦前ということもあるが、映画自体をわざと古臭く作っているようでもある。
軍隊の描き方も実にステレオタイプであるが、そこらあたりを突っ込むのも野暮なのだろう。

私は、驚くような展開があるだろうと勝手に想像してしまい、
ちと滑稽な結末に拍子抜けしてしまった。
野暮であった。

主役の夫妻を高橋一生さんと蒼井優さんが演じる。
芸達者の二人が、演劇的に演じられる様は、なんとも言えない雰囲気がある。
芝居がかった演技が続き、行動もちょっと突飛であるが、
くれぐれも「んな奴はいないよ」と言ってはいけない。
黒沢作品の常連である東出昌大さんが、夫妻を厳しく取り締まる官憲役を演じる。
いい役者さんなので、これからもいろいろな映画でお会いできることを祈る。

私の反省は、銀獅子賞ということで過剰に期待してしまったこと。
不思議な雰囲気を楽しめばいい映画で、それ以上を求めてはいけなかった。
なんというか、お芝居なのである。
反戦とか、正義とか、そういう観点で観るのは野暮だと思う。

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