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映画評 「浅田家!」 [映画評]

本作を監督された中野量太さんの商業映画デビュー作「湯を沸かすほどの熱い愛」は、心に残る映画だった。
続く「長いお別れ」は、なんだか当てに来た感じで、響くものは今一つなかった。
それでもあのデビュー作があるから、映画を撮るたびに期待してしまう。
さて、本作はどうだろう。

この映画は、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志さんの著書をベースにしたもの。
実話をもとにした映画ということになるのだろうが、コメディタッチの作品であり、ドキュメンタリーっぽさはない。
しっかしりした長男の下、
のほほんとやりたいように生きる次男が主人公。
写真に目覚めるもしばらくはふらふら。
ようやく腰を据え、家族を撮った「浅田家」という写真集で注目されるようになるまでが前半。
後半は、東日本大震災の光景を目の当たりにして、再び写真に向き合っていく様を描く。

家族が主役の映画。
父親役は平田満さん。
とぼけた感じの役を、いつもどおり見事に演じられた。
ちゃきちゃきした母親役に風吹ジュンさん。
デビュー曲で息継ぎが印象的だった風吹さんは、上手にお年を取られた。
長男役は妻夫木聡さん。
次男に翻弄される長男役をわかりやすく表現された。
主人公の次男役が二宮和也さん。
もう少し骨太な感じでもいいように思ったが、どうだろう。
二宮さんの恋人役に黒木華さん。
この1月ほどに観た映画に黒木さんは3本出演されている。
どの映画でもピリッとしたものを出されるのはすごい。

最初から最後まで楽しく観られるのだが、
残念ながらズンと来るものはなかった。
どのエピソードも心震わされる一歩手前、という感じ。

どうしても「湯を沸かすほどの熱い愛」と比べてしまうのだが、
次回作くらいからは平穏に観られるだろうか。
そうなってしまうことがいいこととは思えないが。

「浅田家!」は、家族の絆がテーマの優しい気持ちになれる映画。
肩の力を抜いて、リラックスしてご覧ください。

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