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映画評 「ミッドナイトスワン」 [映画評]

孤独なトランスジェンダーが、群れからはぐれた狼のような女の子を預かる。
女の子は心を開かないが、バレエを踊りたいという欲求だけは強く持っている。
貧しいトランスジェンダーは病にも侵されて、という設定。

なかなかにしんどそうな話だが、実際にしんどい。
トランスジェンダーとして生きていくことの困難さがしっかり描かれているし、
孤独な女の子のやり場のなさも伝わってくる。

トランスジェンダーを演じるのが、元SMAPの草なぎ剛さん。
男に生まれたもののどうしても違和感がぬぐえず、女として生きていく主人公を演じられた。
難しく、リスクも高い役柄だったと思うが、見事に果たされた。
女の子役の服部樹咲さんは、新人らしい。
まだ14歳。
バレエの経験があるとことだが、踊りだけではなくたたずまいや存在感に目を引くものがあった。
芝居自体はこれからだと思うが、今後に期待したい。
主人公の友人役の上野鈴華さんも好演。
女の子2人の関係性がいいアクセントになっていた。
なんにでもなれる田口トモロヲさんが、その強みを活かした役でスパイスを利かす。
水川あさみさんは、「愛妻物語」に続いて、ヤンキー感満載の役回り。

難を言えば、終盤の展開がわかりにくかったのが残念。
草なぎさん演じる主人公がやつれていくのだが、その原因がはっきり伝わらず、気持ちが入れにくかった。
主人公の最期も、あれでよかったのか。

監督の内田英治さんは、ドラマ「全裸監督」を監督した人。(総監督は武正晴さん)
本作で、映画界での地位も高まったと思う。
次作が注目される。

「ミッドナイトスワン」は、企画、監督、脚本、原作を手掛けた内田英治さんの思いがほとばしる作品。
与えられたキャストと予算でちゃちゃっと作られた、
「こんなんできました~」という感じの作品とは一線を画している。
ツッコミどころや、もっとこうだったらと思うところもなくはないが、作り手の熱が吹き飛ばす。
熱が熱を呼んだか、草なぎ剛さんと若手女優二人の演技からも情念が伝わってきた。

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