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映画評 「星の子」 [映画評]

この映画を観終わって、
「何が言いたいのかわからん」
という感想を持たれる方は少なくないだろう。
半沢直樹的な、
いい人が悪い人をやっつける、
何かが取り戻される、
といったわかりやすい結末がないから、それも理解できる。
ただ、映画って、何か言わなければならないものでもない気がする。
何かを伝えたくはあるだろうけれど。

正直なところ、ほとんど期待せずに観に行ったのだが、
私はたっぷり楽しんだ。
芦田愛菜さん演じる主人公と友人たちの会話が、実によかった。
あの間、あの言葉。
演出の妙を見せてもらった。

新興宗教が題材となっていて、
それを悪として描き切らないのがもやもやする人がいるだろう。
しかし、そういうものだと思う。
真剣に信じるからこそ、周りからはちょっと滑稽に見える。
ただ、善とか悪とか簡単に割り切れるものではない。

ラストも、見る人によっていろいろな解釈ができそうだ。
両親が大きな決断をしたのか、
それともあのままの生活が続くのか。
どう受け取るかはこちら側に委ねられている。

主演の芦田愛菜さんは、さすがの演技。
繊細で、天然なところもある中学生を自然に演じ切った。
お父さん役の永瀬正敏さんとお母さん役の原田知世さんは、
ちょっとずれたような役柄を、抑えた演技で表現された。
二人の様子はなんだかおかしかった。
宗教団体の幹部役の黒木華さんは、鉄板の仕事ぶり。
悪役といっていい岡田将生さんの演技もよかった。

監督は、大森立嗣さん。
今年公開された「MOTHER マザー」では、尖がり切った映像を届けてくれたが、
今作はほんわりとしたいい映画。
2020年は、この強力な2作を公開された大森監督の年かもしれない。

「星の子」は掘り出し物。
テレビドラマ的な勧善懲悪ではなく、もっと深いところで楽しめる。
私は好きだ。

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