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2020年の日本映画を振り返る その4 「2020年私の選ぶ10本 その2」 [映画評]

キネマ旬報のベストワンは黒沢清監督の「スパイの妻」だった。
しかしこの映画、私には全くピンと来なかった。
観る人によって、評価が大きく異なるのが映画の不思議なところである。
だからこそ、自分で選ぶ楽しみがある。

2020年の邦画から、私の好きな作品10本を選ぶ企画の2回目。
1回目で、
「37セカンズ」「君が世界のはじまり」「ひとくず」「ミッドナイトスワン」「ビューティフルドリーマー」「とんかつDJアゲ太郎」
の6本は決定。
残りの4本を、「星の子」「朝が来る」「罪の声」「一度死んでみた」「糸」「一度も撃ってません」「劇場」「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」「喜劇 愛妻物語」「MOTHER マザー」
の10本から選ぶ。

このうち、「星の子」と「MOTHER マザー」はいずれも大森立嗣監督の作品。
2作続けての良作、さらに全くタイプが違うもの、となると、敬意を表して大森作品から1作選ぶのが妥当だろう。
「MOTHER マザー」の方は、毎日映画コンクールで大賞を獲ったりもしているので、ここでは「星の子」の方を選ぼう。
なんとも不思議な空気感を持った映画であり、観終わった後もほわほわした余韻が残った。
いい映画によくあることだが、どうとでも解釈できるし、いろいろな解釈をしたくなった。

続いて「朝が来る」を。
社会派的テーマにミステリー的要素を巧みに掛け合わせた河瀬直美監督作品。
観ている側も揺さぶられた。
若手女優、蒔田彩珠さんの演技が評価されたのも嬉しかった。
蒔田さんは、「#ハンド全力」「星の子」でもいい演技をされていた。

あと2本。
迷うが、「喜劇 愛妻物語」を。
水川あさみさんが悪妻をフルスロットルで演じられている。
濱田岳さんがかすむほどの怪演。
よくこのオファーを受けたな、と思うほどの役どころ。
水川さんは、2020年最も衝撃的な女優さんだった。

あと1本。
「罪の声」「糸」からはメジャー映画の底力を感じたし、
「一度も撃ってません」「劇場」はアングラな魅力が捨てがたかった。
「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」の緊張感も心地よかった。
こうした映画があるなかで、あえて、というつもりはないが、広瀬すずさん主演の「一度死んでみた」を選びたい。
ありえない設定、とんでもない展開のドタバタコメディ映画。
しかし、いろいろな伏線が回収されていくのが快感だし、何より面白かった。
もっともっともっと評価されてしかるべき作品だと思う。

悩んだ末に選んだ10本は以下のとおり。
「37セカンズ」
「君が世界のはじまり」
「ひとくず」
「ミッドナイトスワン」
「ビューティフルドリーマー」
「とんかつDJアゲ太郎」
「星の子」
「朝が来る」
「喜劇 愛妻物語」
「一度死んでみた」

バラエティに富んだ面々で、それぞれの映画に思い出がある。
観に行った日は暑かったな、とか、
あの映画館で観たな、とか。

今年も素敵な映画に巡り合えますように。
映画が続きますように。

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書評 「『知域』に1歩飛び出そう! ネットワーク活動でひろがる公務員ライフ」 [読書記録]

後藤好邦さんが書かれた
「『知域』に1歩飛び出そう! ネットワーク活動でひろがる公務員ライフ」
という本を読んだ。

後藤さんは山形市役所に務めておられ、
地方公務員の世界では、広く知られた存在である。
この本が出版されるのを待望されていた方も少なくないのではないだろうか。

このところ、スーパー公務員という言葉をよく聞く。
飛び抜けた成果を上げている公務員をそう呼ぶようだ。
後藤さんの大車輪の活躍ぶりは、まさに「スーパー」と呼ぶにふさわしいのだが、「スーパー公務員」という表現が似合うかというと、個人的にはちょっと違う気がする。
後藤さんは、熱く、謙虚で、子煩悩で、なんというか、生身の人間である。
スーパー公務員、として別のジャンルに飾ってしまうのは、ふさわしくない気がする。
この本にも、後藤さんの人間としてのありようが詰まっている。
私が後藤さんの何を知っているわけではないのだが、読み進めるにつけ、後藤さんの人柄が浮かんできた。

後藤さんは、まっすぐである。
もちろん、いろいろな葛藤があったり、悩んだり、立ち止まったり、言いたいことがあったりもするのだと思うが、
根本がまっすぐであると感じられる。
思いは届く、と信じておられるように映る。
そして、そのためにやれることはやるのだ、と自らに課しておられるようだ。

地方公務員だけではなく、今の世の中全体として、まっすぐであり続けることは難しい。
しかし、まっすぐさが人を動かしたとき、その力は強い。
後藤さんは、まさにそれを実践されている。

後藤さんは、素直である。
これだけ名前が知られるようになって、なお素直でいられることに、凄みさえ感じる。
後藤さんにとっては、自分を高めてくれる方に、肩書も年齢もない。
ありがたい、自分の役に立った、と思えば、素直に心から感謝することができる。
この本の中でも、数多くの方に感謝の気持ちを語っておられる。
できそうでできることではない。

タイトルで、
「1歩飛び出そう!」
と訴えているように、これから伸びていく若い人が読むと大きな刺激になるだろう。
だが、それだけではない。
むしろ、部下を持つ存在の方々にお読みいただきたい内容が詰まっている。
「なぜ若い奴は動かないんだ」
「どうして若手がついてこないんだ」
と思ったとき、自らを振り返ることができる一冊である。

この本は、今時珍しく、と言うべきか、文字で一杯である。
図もグラフも写真も、全然使われていない。
その代わり、文字の中に後藤さんの人間が見える。
まっすぐで、素直な後藤さんの姿が映る。

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2020年の日本映画を振り返る その3 「2020年私の選ぶ10本 その1」 [映画評]

先日、「2020年困った映画」について書いたが、今回はよかった映画。
映画界にとっても厳しい一年だったと思うが、もちろん良作も多かった。
例年と比べると、少々物足りない面もあったが、やむを得ない気もする。
去年観た邦画96本の中から、10本を選んでみたい。

まず、絶対に外せない映画として思いつくのは、
「37セカンズ」「君が世界のはじまり」の2本。

「37セカンズ」は、若い女性身障者が主人公。
実際に演じているのもオーディションで選ばれた身障者の方。
難しいテーマであると思うが、一人の女性の成長物語として、エンターテインメント性も保ちつつ描き切っている。
際どい領域にも全力で踏み込みつつ。
後半、あらあらな展開もややあるが、それでも損なわれない素晴らしさがある。

「君が世界のはじまり」は、青春群像劇。
今の時代らしく、まっすぐな青春を歩んでいるわけではないが、ヒリヒリしていて、尖っている姿の根本は変わっていない。
ショッピングセンターでの模擬ライブシーンの絶頂感はたまらなかった。

「37セカンズ」「君が世界のはじまり」の2本とも、女性監督の作品。
女性監督はまだあまり多くないが、これからそうした傾向も変わってくるかもしれないと感じさせてもらえた。

続いて、「ひとくず」と「ミッドナイトスワン」も忘れがたい。

「ひとくず」は、劇団を主宰している上西雄大さんという方が監督・脚本・主演を務められた渾身の作品。
不器用過ぎる男と女が、ガシガシぶつかりながら家族を求める。
自主映画のようなざらざらした手触りが、観ているものに直接届く。
強烈。

「ミッドナイトスワン」は、各種の映画祭でも高い評価を受けている作品。
トランスジェンダー役を演じる草なぎ剛さんの好演が光るが、服部樹咲さん、上野鈴華さんという二人の若手女優も素晴らしかった。

続いての2本は異論も多々ありそうな作品。
それは、「ビューティフルドリーマー」と「とんかつDJアゲ太郎」である。
両作とも、ネットなどでの評価はあまり高くない。
しかし、個人的にはフルに楽しめた。

「ビューティフルドリーマー」は、アニメ史上に残る傑作とされる同名タイトルの「うる星やつら」の劇場第2弾作品をベースとした作品。
うる星版を監督した押井守さんの原案を映像化している。
なんじゃこりゃ、名作に泥を塗っている、など批判の声も小さくないが、私は面白かった。
胸が痛くなった、胸が熱くなった。

続いて、「とんかつDJアゲ太郎」。
伊藤健太郎さん、ブラザートムさん、伊勢谷友介さんといったお騒がせの面々が出演していて、妙な話題になってしまったが、映画そのものは極上エンタメ。
原作と違い過ぎる、ご都合過ぎるなどいろいろ言われたようだが、
素直に楽しい映画を素直に楽しむのも映画を観る楽しみ。

ここまでで6本。あと4本を選ぼう。
厳選ノミネートは、
「星の子」
「朝が来る」
「罪の声」
「一度死んでみた」
「糸」
「一度も撃ってません」
「劇場」
「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」
「喜劇 愛妻物語」
「MOTHER マザー」

ここからの4本をどう選ぶかは、次回に続く。

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任天堂強し [経済を眺める楽しみ]

任天堂が、2021年3月期の連結純利益予想を従来の3千億円から4千億円に上方修正した。
前期比54.7%増の大幅増益で、過去最高を更新する見通しである。
今年度の好調は、
・新型コロナウイルス流行に伴う「巣ごもり消費」
・「あつまれ どうぶつの森」の大ヒット
といった要因があるが、そうした単年度の要因を外しても任天堂の強さは際立つ。
復活力とでも言うのだろうか。

さかのぼると2000年ごろの任天堂は、苦しい戦いをしていた。
ファミコンやゲームボーイでの成功の後、
ソニーの「プレイステーション」やマイクロソフトの「Xbox」におされ、
自身が発表した「NINTENDO64」や「ニンテンドーゲームキューブ」も振るわなかった。
ソニーとマイクロソフトという世界の超巨大企業に挟まれ、
任天堂の将来は危ぶまれた。

しかし、
2004年にはニンテンドーDS、
2006年にはWii
を発売し、これらがいずれも大ヒット。
2008年には過去最高益を記録する。

しかし、その後Wiiが勢いをなくし、3DSも今一歩。
さらにスマートフォンやタブレットが台頭し、
任天堂のゲーム機が売れなくなっていく。
そして2012年3月期には上場以来初の赤字を計上。
2013年、2014年と続けて営業赤字となったときには、
さすがの任天堂も厳しくなったかと思えた。

しかし、そこから巻き返す。
スマホゲームの供給を始めるとともに、
2017年には、新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を発売。
これが世界で大ヒットとなったのである。

「もうだめか」
と思わせられるようなピンチを何度も迎え、そのたびに跳ね返してきたのが任天堂である。
おそらくこれからも、
「今度こそもうだめか」
という危機を迎えることがあるだろう。
そして、その危機が数年続くこともあるかもしれない。
それでも、きっとやり返す。
そういう会社である。

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映画評 「花束みたいな恋をした」 新しい恋愛映画のスタンダードが生まれた [映画評]

「好きな恋愛映画を教えてください」
と聞かれたら、どんな映画を挙げようかと考えたことがあった。
ここ数年のなかでは、
「殺さない彼と死なない彼女」
がよかったが、ど真ん中の恋愛映画ではなかった感もある。
しかし、今なら迷わず答えられる。
「『花束みたいな恋をした』がお勧めです」と。

この素敵な映画を監督したのは、昨年公開された「罪の声」で数々の映画賞を受賞された土井裕泰さん。
土井さんの作品では「ビリギャル」も大好きだった。
本作は、胸に応えるという意味では、それらの作品も超えている。

脚本は、坂元裕二さん。
「東京ラブストーリー」など、テレビドラマの脚本で有名な方だが、本作で映画脚本家としての力も存分に示された。

映画は、どこにでもいる感じの二人の大学生の偶然の出会いと甘い恋愛、
そこから始まる二人の暮らしを描いている。
特別な二人ではなく、特別なことが起きるわけではない。
誰にでも起きたかもしれないシーンで構成されている。

「花束みたいな恋」。
花束はとても可愛くて、美しい。
しかし、生命力を持っているものではない。
水につけておいても、一定の時間が経つとしおれてしまう。
最初可愛かっただけに、なおさら痛々しい。
この映画の恋も、そんな花束のようだった。

決してハッピーエンドというわけではないが、バッドエンドでもない。
そうなるしかなかった感じで映画は終わる。
何も足さなくていい、何も引かなくていい、という感じの映画を観るのは嬉しい。

主演は、有村架純さんと菅田将暉さん。
有村さんは「ビリギャル」以来の土井監督とのタッグ。
実に相性がいい二人である。
菅田さんは昨年公開の「糸」に続いて恋愛映画で好演された。

ほとんど有村さんと菅田さんだけの映画なのだが、
最終盤に細田佳央太くんと清原果耶さんが、生まれたてカップルとして登場される。
この二人の初々しさが、実に切なく映って胸に迫る。

「花束みたいな恋をした」は、新しい恋愛映画のスタンダードと言っていい作品。
恋している人も、
恋をしたい人も、
恋を卒業したと思っている人も、
恋なんか関係ない人も、
是非ご覧いただきたい。
いい映画というのはみんなそうだが、観る人によって受け取り方が変わると思う。

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ここのところで読んだ30冊 [読書記録]

ここのところで読んだ30冊は以下のとおり。

「沖で待つ」 絲山 秋子
「変われ!東京」 隈 研吾、清野 由美
「ルポ 農業新時代」
「人なぜ簡単にだまされるのか」 ゆうき とも
「憂鬱な希望としてのインターネット」 村上 龍
「米中新冷戦 偽ニュースとプロパガンダ全内幕」 古森 義久、黒田 勝弘
「これからの農業経営」
「ヒドラ」 山下 柱司
「馬たちよ、それでも光は無垢で」 古川 日出男
「ぶたぶた」 矢崎 存美
「ミドルマネジメントの仕事100」 福山 穰
「子どものいない人生の歩き方」 くどう みやこ
「中国発の金融恐慌に備えよ!」 宮崎 正弘、田村 秀男
「ゼロからでもできる農業のススメ」 常瀬 村泰
「月のきほん」 白尾 元理
「いつも機嫌がいい人の小さな習慣」 有川 真由美
「ビジネス・クリエーション!」 ビル・オーレット
「月まで3キロ」 伊予原 新
「別府式 湯~園地大作戦」 長野 恭紘、清川 進也
「京アニ事件」 津堅 信之
「穴」 小山田 浩子
「熱誠憂国」 李 登輝
「空想教室」 植松 努
「グレタ たったひとりのストライキ」
「最高のチームに変わる 仕組みのつくり方」 石田 淳
「月へふたたび」 清水建設宇宙開発室
「仕事ごっこ」 沢渡 あまね
「なぜいま私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?」 松村 嘉浩
「農で1200万円」 西田 栄喜
「強力伝・孤島」 新田 次郎
「自分経営入門」 友成 真一

絲山秋子さんの「沖で待つ」は芥川賞受賞作。芥川賞を獲った作品が必ずしも胸に響くとは限らないが、本作はズーンと届いた。必ず再読する。

伊予原新さんの「月まで3キロ」は、実に映画的な短編集。どの作品でも情景がありありと頭に浮かぶ。

「別府式 湯~園地大作戦」の著者である長野恭紘さんは別府市長、清川進也さんは「湯~園地大作戦」のプロデューサー。街を舞台にした仕掛けは楽しい。

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自治体財政は税収減を地方債で埋める仕組みにはなっていない 念のため [公会計]

東京都が令和3年度予算案を発表した。
そして本件に関する朝日新聞の見出しは、
「都の当初予算案7・4兆円 コロナで税収減、都債で賄う」
というものだった。

これを読んだ人はどう思うだろう。
もちろん、
「税収が減ってそのままでは予算が組めなくなったから、足らなくなった分を借金した」
と解釈するだろう。
この見出しからは、そう読み取るのが自然だし、ほかの読み方はないだろう。
ちなみに本文中には、
「都は今回、これまで抑えてきた都債を5876億円発行する。前年度比3792億円増で、税収減を都債で賄う構図となる。」
とある。

ご存知の方が多いのか少ないのかよくわからないが、
地方財政においては、収入が足らない分を借金で賄う、ということはできない。
毎年野放図に赤字国債を発行している国とは、そこが大きく違う。
地方自治体が借金できるのは、建設事業などに充てる分のみと限定されている。
仕組み上、税収減により足らなくなった分を都債で賄うということはできないのである。

記事を書いた記者の方は、地方財政制度にも詳しいだろうから、
自治体が歳入不足を借金で穴埋めできないことは当然ご存知だろう。
しかし、税収が減った一方で都債が増えたのも事実だから、結果として穴埋めをしたような形になっている。
だから、ややこしい過程は省いて「コロナで税収減、都債で賄う」という見出しにされたのだろう。
限られた字数であり、事情はわからなくもないのだが、
誤解を招きかねないとは思う。

ちなみに日本経済新聞では、こう書いている。
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で税収は4000億円減少する見通し。各種基金を取り崩して財源を確保し、残高は半減する見込みだ。」
つまり、税収減の分は基金の取り崩しで埋めているという表現で、制度上はこちらの方が正しいと言える。

国や民間企業の経営方法を見ても、借金で事業を回すのは普通のことである。
だから、収入不足分を借金で埋めることができないなどと想像もされないかもしれない。
しかし、大事なことなので、念のため繰り返し。
地方財政においては、収入が足らない分を借金で賄う、ということはできない。
これをご存じない方がとても多いように思うのだが、是非知ってほしい。
だから地方自治体は苦労しているのだし、
だから地方自治体は借金が少ないのである。

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アメリカ市場でヘッジファンドと個人投資家が戦っている [経済を眺める楽しみ]

このところのアメリカ株式市場の注目は、
ビデオゲーム小売チェーン「ゲームストップ」。
短期間でとんでもない高騰暴落を演じている。

ゲームストップは、ビデオゲームのパッケージソフトを売る小売業。
どちらかというと、ネット社会から取り残された衰退しつつある企業と思われていて、
実際、去年の9月くらいまでの株価は6ドル近辺だった。
それが昨年末くらいから上昇に転じ、
1月後半にはとんでもない乱高下を繰り返すようになった。

1月28日の相場に至っては、
始値265ドル
高値483ドル
安値112ドル
終値193ドル
という状況である。
一日の間に、高値から4分の1にまでなった瞬間があったということになる。
こうなると、ついている株価に合理的な説明は全くつかない。

この前代未聞のラリーの背景には、ヘッジファンド対アマチュア個人投資家の戦いがあるという。
アマチュア投資家がネットを介して集まり、
長い間ウォール街を仕切ってきたヘッジファンドに一泡吹かせることをもくろみ、
ヘッジファンドがカラ売りを仕掛けていた銘柄を強引に買い上げたというのである。
途中からはマネーゲームの様相になり、野次馬的に参加した人もいるだろう。

そして、アマチュア投資家の取引を支えたのが、
「株式市場を民主化する」を旗印に手数料無料で人気を博す手数料無料の投資アプリ、
「ロビンフッド」だったそうだ。
しかし、このロビンフッドが突然、ゲームストップ株を買うことを制限し、株価は暴落。
その後、制限を緩和してまた暴騰。
日本流に言うと「祭り」状態である。

名も知れぬアマチュア投資家たちがウォール街のプロを出し抜いた、
というのは一見痛快ではあるが、価格を意図的に操作して市場を混乱させているとも言える。
バブルではない、という意見も多いアメリカ株だが、今回のようなことが起きるのは、
企業というより株価だけに目が向かっていることの象徴かもしれない。
少し危うい。

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