SSブログ

映画評 「花束みたいな恋をした」 新しい恋愛映画のスタンダードが生まれた [映画評]

「好きな恋愛映画を教えてください」
と聞かれたら、どんな映画を挙げようかと考えたことがあった。
ここ数年のなかでは、
「殺さない彼と死なない彼女」
がよかったが、ど真ん中の恋愛映画ではなかった感もある。
しかし、今なら迷わず答えられる。
「『花束みたいな恋をした』がお勧めです」と。

この素敵な映画を監督したのは、昨年公開された「罪の声」で数々の映画賞を受賞された土井裕泰さん。
土井さんの作品では「ビリギャル」も大好きだった。
本作は、胸に応えるという意味では、それらの作品も超えている。

脚本は、坂元裕二さん。
「東京ラブストーリー」など、テレビドラマの脚本で有名な方だが、本作で映画脚本家としての力も存分に示された。

映画は、どこにでもいる感じの二人の大学生の偶然の出会いと甘い恋愛、
そこから始まる二人の暮らしを描いている。
特別な二人ではなく、特別なことが起きるわけではない。
誰にでも起きたかもしれないシーンで構成されている。

「花束みたいな恋」。
花束はとても可愛くて、美しい。
しかし、生命力を持っているものではない。
水につけておいても、一定の時間が経つとしおれてしまう。
最初可愛かっただけに、なおさら痛々しい。
この映画の恋も、そんな花束のようだった。

決してハッピーエンドというわけではないが、バッドエンドでもない。
そうなるしかなかった感じで映画は終わる。
何も足さなくていい、何も引かなくていい、という感じの映画を観るのは嬉しい。

主演は、有村架純さんと菅田将暉さん。
有村さんは「ビリギャル」以来の土井監督とのタッグ。
実に相性がいい二人である。
菅田さんは昨年公開の「糸」に続いて恋愛映画で好演された。

ほとんど有村さんと菅田さんだけの映画なのだが、
最終盤に細田佳央太くんと清原果耶さんが、生まれたてカップルとして登場される。
この二人の初々しさが、実に切なく映って胸に迫る。

「花束みたいな恋をした」は、新しい恋愛映画のスタンダードと言っていい作品。
恋している人も、
恋をしたい人も、
恋を卒業したと思っている人も、
恋なんか関係ない人も、
是非ご覧いただきたい。
いい映画というのはみんなそうだが、観る人によって受け取り方が変わると思う。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事