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映画評 「ヤクザと家族 The Family」 [映画評]

ヤクザ映画、というものが、日本では一つのジャンルとして成立している。
そして、傑作と呼ばれる作品も少なくない。
「仁義なき戦い」は世界中にファンがいるし、
今年は、白石和彌監督の「孤狼の血 LEVEL2」がスタンバっている。

ヤクザ映画と言えば暴力であり、「孤狼の血」もそっち系だが、
一方で「家」「ファミリー」がテーマになることもある。
洋画になるが、「ゴッドファーザー」がそっち系である。
本作はタイトルに「The Family」と謳っているように家系を狙ったのだと思われる。
しかし、それが十分に成功しているとは思えない。

そもそも、本作では家族がさっぱり描かれない。
ヤクザにおける疑似家族としてのつながりも、
実際の家族も、
どちらもごく表面だけの描写に終わっている。
舘ひろしさんが親分役なのだが、親らしいことをするわけではない。
かといって、かっこいい大立ち回りをするわけでもない。
最後まで、タイトルと内容がそぐわないままであった。

本作のメガホンは、藤井道人監督。
しばらくの間は、「『新聞記者』の」と言われ続けるだろう。
その「新聞記者」でもそうだったのだが、
役所の風景やネットをめぐるあれこれの描き方は、悪い意味で漫画的で興醒めする。
わざとそうされているのか、藤井監督の理解がああした感じなのか。
どちらにしても、映画の質を下げているように思える。

主演は綾野剛さん。
熱演されているが、意味不明な行動が多く、ちとお気の毒。
尾野真千子さんはいつもどおり素敵だが、学生の役はいくらなんでも。
北村有起哉さんのバイプレーヤーぶりはさすが。
磯村勇斗さんの若者っぷりはよかった。

「ヤクザと家族 The Family」は、テーマが絞り切れずふらふらしてしまったもったいない作品。
気持ちのこもった演出がなされているシーンがいくつもあるし、
役者さんたちも気合を入れて演じている。
だけになおさら。

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