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臨時財政対策債への理解 [公会計]

一般の方にはなじみが薄いと思うが、自治体が発行する地方債の一つに、
臨時財政対策債、略して臨財債というものがある。
臨時、とされているとおり、当初平成13年から平成15年度までの3か年の臨時的措置として始まったものである。
しかし、かれこれもう20年続いているから、さすがに臨時感はない。

実にややこしい仕組みなので、うまく説明することは難しい。
地方債であるが、他の借金とは大きく性格が異なっているということを理解していただきつつ、
抑えておくべきは、
・地方交付税制度の枠組みの中にある
・自治体が発行額を決められるわけではなく、地方交付税とセットで国が発行限度額を示す
・償還に要する費用は全額後年の交付税で措置されるため、基本的に自治体の負担はない
といったところだろうか。

とにかく、勘違いしてはいけないのは、
「赤字分を埋めるための地方債ではないこと」
である。
歳入が100、歳出が120だから、足らない分の20を臨財債で埋める、
という類のものではない。
臨財債については発行できる額を自治体が決められるものでもないのだから当然であるが。

なぜこんなことを書いているかというと、埼玉県の予算案を伝える新聞記事の表現に、ちと気になる文言があったからである。
ちょっと三紙の記事を引用してみたい。

朝日新聞
「財源不足を補う臨時財政対策債は2050億円と前年度からほぼ倍増」
日本経済新聞
「臨時財政対策債の発行額を1,000億円以上増やして不足分を補う」
産経新聞
「財源不足を穴埋めするために県が発行する『臨時財政対策債』の規模が拡大」

この記事を読まれた方はどう思うだろう。
当然、
「歳出に見合う歳入が確保できなかったので、その不足分を借金して賄おうとしているんだな」
と思うだろう。
それ以外の解釈はできそうにない書き方なので仕方ない。
事実とは違っているが。

この記事を書かれた方は、記事を書かれているくらいなので地方財政に関する一定以上の知識を持っておられる方だと思う。
だから、臨財債について、赤字国債と同じような意味で発行することはできないことはご存知だろう。
全国の地方自治体の総合計である地方財政計画において、地方財政が財源不足に陥り、それを補うために発行されるのが臨財債なので、そこらへんの説明を一気に端折って、上記のような表現になったのだろう。
字数の制限もあるだろうし。

しかし、結果的におそらく誤解を広めてしまったことは残念である。
このわかりにくさといい、
臨時と言いながら20年も続いていることといい、
仕組みの継続性に心配があることといい、
臨時財政対策債には問題が山盛りである。

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