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映画評 「岬のマヨイガ」 [映画評]

柏葉幸子さんの野間児童文芸賞受賞作を原作にしたアニメーション作品。
タイトルにある「マヨイガ」とは、「訪れた人をもてなす」と岩手県で言い伝えられている伝説の家のこと。
その幻の家は、
美味しいものも振る舞ってくれるし、布団も敷いてくれる、風呂も沸かしてくれる、
で至れり尽くせり。
そこで暮らすことになった老女と二人の少女(17歳と8歳)の物語。
老女は、“ふしぎっと”と呼ばれる妖怪のような存在(例えば河童)とコミュニケーションをとることができる。
東北が舞台であり、震災の年の設定。
二人の少女は、それぞれの事情を抱え、帰るあてがなくなり、見ず知らずの老女と暮らし始める。

ジブリっぽいファンタジーと妖怪大戦争を掛け合わせたような作品。
老女と少女の静かで豊かな不思議なくらし。
震災が残した爪痕。
妖怪と共存していたかつての日本の姿。
リアリティははじめから全くないのだが、素直に映画に入ることができた。
後半の大技はさすがにちょっとやり過ぎ感はあるが、まあ。

ただし、宮崎駿監督の一連の作品と比べてしまうと、何か決定的な違いがある。
「ここが足りない」
などと言葉で表現できるものではなく、感じる類のものだが、
決定的に違う。
宮崎監督と比較するのはフェアではないかもしれないが。

残念だったのは、芦田愛菜さんが声を演じる17歳の少女の背景。
とんでもない父親による型にはまったDVからは、作り手の誠意が感じられなかった。
8歳の少女の方の設定もおざなり。
おばあさん役を演じたのは大竹しのぶさん。
私の大好きな映画「漁港の肉子ちゃん」でも声の出演をされていた。

岩手県の大槌町や遠野市が舞台。
震災後、ちょっとお世話になった土地なので、風景などを懐かしく見た。

「岬のマヨイガ」は、不思議な愛着を感じさせる映画。
傑作と呼ぶには残念ながらかなりの距離があるが、ほんわり楽しめた。
現在公開中の「妖怪大戦争」より、こちらの方がそれっぽい作品になっているのが、
なんだかおかしい。

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