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立憲民主党のコメントから今の憲法論議を考える [ヨモヤ]

憲法記念日に合わせて、各党がコメントを出している。
それぞれの個性が表れる内容になっているが、なかから立憲民主党のコメントを取り上げて、憲法論議を取り巻く状況をおさらいしてみたい。
立憲民主党を選んだのは、党名に憲法を掲げているし、野党で最も支持率が高い政党であり、非自民の考え方を知る、一つの指標になるだろうと思ったからである。

途中、いろいろ突っ込んでいくが、一部だけを抜き出して曲解しているように思われるのもなんなので、長くなるが全文を掲載する。
『 』内が、立憲民主党からのコメントである。

『本日、日本国憲法の施行から71年を迎えました。
 日本国憲法の核である「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」は、戦後、日本国民が長い年月をかけて育み、定着させてきたものです。日本の自由と民主主義、平和と繁栄の土台となっている日本国憲法の歩みを重く受け止め、本日の憲法記念日をお祝いします。』

ちなみに、自民党のコメントは、「憲法記念日を迎えました」とだけしている。
他の政党も、特別お祝いは述べていないが、民進党は、「本日の憲法記念日を心から祝したいと思います」としている。

『日本の中には、現行憲法を一字一句変えるべきでない、議論をすることそのものを改憲への入り口として拒否する、いわゆる「護憲派」と、権力行使を容易にし、国民の義務規定の創設や、国民の権利を制限する方向の憲法改正を主張する、いわゆる「改憲派」の二つの大きな流れがあります。』

あれ?
護憲派の定義はまだいいとして(多分、護憲派の中でも異論はありそうだけれど)、「改憲派」の内容がほとんど初耳。
改憲派って、「権力行使を容易にし、国民の義務規定の創設や、国民の権利を制限する方向の憲法改正を主張する」人たちだったっけ。
ちなみに、改憲派であるはずの自民党のメッセージには「①安全保障に関わる自衛隊②統治機構のあり方に関する緊急事態③一票の較差と地域の民意反映が問われる合区解消・地方公共団体④国家百年の計たる教育充実について」をテーマにすると述べられている。
立憲民主党の定義とは全然違う。
権利を制限する方向の憲法改正を主張している人も、まあ、いなくはないのだろうが、改憲派はそれのみとするのはあまりにも無理がある。
どうしてこんな無理な定義をしようとするのか、私にはうまく理解できない。
ちなみに、よく読むと、「護憲派」の方々についてもちょっとディスり気味である。

『しかし、憲法を改めようとするのであれば、このような思想的、観念的・抽象的な議論ではなく、憲法の規定が原因で、政策遂行に支障が生じることがあるのか、あるいは憲法に規定がないことによってどのような不都合が生じるのかなど、その必要性について具体的な事実に基づいて検討されることが必要不可欠です。』

ここは至極当然のことを言っている。
改めようとしている人は、誰だってそうしようとしている。
むしろ、改めようとしない人が、事実に基づいて検討していないのではないだろうかと思う。

『いま日本国憲法は、大きな危機に瀕しています。
森友学園問題、加計学園問題、PKOの日報問題等にみられる文書改ざんと隠蔽は民主主義の根幹を揺るがす非常に深刻な問題です。
基本的人権の中でも、特に重要な人権である表現の自由が民主主義のプロセスにとって有効に機能するためには、その前提として、国民が十分かつ正確な情報に接していることが必要不可欠です。民主主義の前提となる「知る権利」について議論を深め、公文書管理や情報公開の在り方を正していきます。数の力で、この国のかたちを歪める安倍自民党政権に、立憲民主党は正面から対峙してゆきます。』

まあ、仕方がないけれど、やはりそう来られたか。
真面目な憲法の話を聞きたかったけれど。
年に一度の憲法記念日、立憲を名前に掲げる立憲民主党さんだけに、ガッツリした憲法論が示されるのかと思ったけれど。
残念ながら、というか、当然の選択なのだろうけれど、憲法について大上段に語るより、現政権を批判する方に流れてしまった。
この日くらいは憲法について語っても、とは思うものの。

『憲法記念日にあたり、立憲民主党は、権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与するとの観点からの憲法の論議、立憲主義の観点からの憲法論議、「立憲的憲法論議」を深めることを、改めてお約束致します。』

最後に力強く論議を深めることを約束してくださったのだが、具体的な中身はなし。
どの内容を、いつまでに、どうしたい、というのは、どうやら無いようだ。
自民党及び日本維新の会は当然のこととして、公明党や希望の党も具体的な項目を挙げて議論すべき旨を表明していただけに残念である。

以上、立憲民主党の憲法記念日へのコメントについて概観してみた。
同党のコメントは、良くも悪くも、マスコミを通じて語られている言葉の最大公約数的な感じがした。
一般的な感覚も、これに近いのだろう。

今の憲法は、その成り立ちから、不健康で不健全である。
また、時代の変化に合っていない面があるのも、普通の人は認めるところであろう。
憲法を本当に大切に思うのなら、正面から向き合って、直すべきは直すべきだと思う。
そして、思いのある人が憲法を直すことの先頭に立つべきだと思う。
まあ、憲法改正では票にはつながらないのかもしれないけれど。

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