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映画評 「孤狼の血」 オススメ! [映画評]

観ても観ても面白くない映画ばかり、とお嘆きの方は少なくないだろう。
どれもこれも似たような映画ばかり、とあきらめ顔の方も少なくないだろう。
子供向けの映画ばかりだなあ、と憂えている方も少なくないだろう。
そんな貴兄に、本作「孤狼の血」をお勧めしたい。
今年の一本になり得る快作である。

監督は、昨年「彼女がその名を知らない鳥たち」で各種映画賞をにぎわせた白石和彌さん。
個人的には、「彼女が・・・」より本作の方がずっとよかった。

しかし、残念ながらというかなんというか、万人受けする映画ではない。
主人公は刑事だが、「仁義なき戦い」の系譜につながるヤクザ映画であり、暴力シーンの描き方は容赦がない。
登場人物にろくな人間がいないというのもこうした映画の特徴で、爽快感からはほど遠い。
甘い道に逃げ込まず、最後まできっちり映画を仕上げ切った白石監督の手腕は高く評価すべきだと思う。
というか、私がそんなことを書かずとも、きっとこの作品で白石監督の評価はさらに高まるだろう。

主演は、役所広司さんと松坂桃李さんのお二人。
ヤクザ以上にヤクザっぽいふるまいを繰り返す叩き上げの役所さんと、
振り回される松坂さん演じるエリート刑事。
こうしたベテランと若手の組み合わせはよくある設定だが、エンタテインメントの枠組みギリギリのところで描かれるため、既視感に浸っている余裕などない。
役所さんの素晴らしさは相変わらずであり、松坂さんにとっては、この映画が一つのエポックになるかもしれない。

出演はほかに、真木よう子さん、滝藤賢一さん、田口トモロヲさん、石橋蓮司さん、江口洋介さんら。
いい映画とはそういうものだが、皆が皆好演されている。
悪役の男優陣はそろって忌々しかったし、真木さんの女っぷりも素晴らしかった。
江口さんが守孝(もりたか)という役名なのは、なんだか不思議な気分だった。
目を引いたのは、松坂さんとちょっといい関係になる役の阿部純子さん。
健気かつ陰のある女性を魅力たっぷりに演じられていた。

「孤狼の血」を観るには、覚悟がいる。
ちょっと暇つぶしに、的な気持ちで劇場に入ったらえらい目に合う。
しかし、映画ファンには熱烈プッシュである。
この作品は観た方がいい。

監督、スタッフ、出演陣に加え、
この映画の企画にGOを出された方を含めて、敬意を表したくなる。
そんな作品である。

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