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映画評 「四月の永い夢」 [映画評]

「四月の永い夢」と言われても、そんな映画知らないなあ、という人がほとんどだと思うが、本作は、第39回モスクワ国際映画祭で2冠に輝いた作品であるという。
邦画好きとしては、観てみたくもなろうというものだ。

映画のHPで公開されているあらすじは、
「3年前に恋人を亡くした27歳の滝本初海。音楽教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。元教え子との遭遇、染物工場で働く青年からの思いがけない告白。そして心の奥の小さな秘密。」
というもの。
波乱万丈のストーリーではなく、様々なエピソードが積み上げられていく感じの映画である。

私は、こうした日本映画の小品が好きだ。
何も起こらない映画も嫌いではない。
しかし、何も起こらなければそれでいい、というものではない。
本作は、観る者を引き付ける魅力が十分であるとは言い難く、登場人物への感情移入も非常に中途半端にしかできない。
演技やセリフも、なにやらギクシャクしており、それは手作り感というより稚拙に近いものさえ感じてしまう。
いろいろと伏線のようなものも描かれているのだが、それらは空中に飛び散ったままであるべきところに収まることなく終わった。

映画を振り返って、どこをどうしたらよかったのかと考えようとしたが、どこがどうというより、そもそもずれていたように思える。
少しいじったくらいではどうにもならない。
最初のシーンからおやおやだった。

中川龍太郎監督は、脚本も手掛けておられる。
オリジナルの本から手掛けられる意気やよしだが、今作は空回った感が否めない。

主演は、朝倉あきさん。
少し陰のある女性をみずみずしく演じられていた。
演技に問題はなかったが、脚本があれまあなので、熱演が活きなかった。
また、女優さんらしくお綺麗なので、物語の説得力を減らしていた面もある。
他の出演もあまり有名な方はおられないが、高橋由美子さん、高橋惠子さんといった、かつての人気女優さんが出ておられた。
高橋由美子さんは、1994年に放送されたテレビドラマ「南くんの恋人」の頃はトップアイドルだった。
高橋惠子さんは、1970年の「おさな妻」で鮮烈なデビューを飾られた方である。
お二人に会えたのは、ちょっと得した感じ。

繰り返すが、私はこういう類の日本映画が好きであり、これからも作られ続けてほしいと願っている。
そしてそのためには、多くの人に足を運んでもらいたいとも思う。
だから、「四月の永い夢」を観ようかどうか迷っている方がおられたら、ぜひ劇場で確かめていただきたい。
ただ、ニュートラルな方にまでお勧めする気持ちにはなれない。
残念だが。

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