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映画評 「ダンスウィズミー」 [映画評]

矢口史靖監督というと、どうしても「ウォーターボーイズ」と「スウィングガールズ」の2作が思い浮かぶ。
どちらも20年近く前の作品だけに、ご本人とするとそれほどうれしくないかもしれない。
しかし、
「ウォーターボーイズ」では妻夫木聡さんが、
「スウィングガールズ」では上野樹里さんが、
それぞれ大ブレイクするきっかけをつかんだこともあり、
この2作の印象はどうしても強くなる。
結果、矢口監督作品と言うと、「さわやかなコメディ」的な作品が求められることになる。
まあ、そういう作風でもあるが。

本作「ダンスウィズミー」も、そんな矢口作品の系譜に連なるもの。
ワンパターンと言えばそうだが、得意な形を持っていることは強みである。
また、ワンパターンのなかで人を喜ばせるためには、かなり高度な技術も必要とされる。

予告編はかなり面白そうだったが、
日本製のミュージカルへの不安もあり、
あまり期待度は高めずに。
しかし、これがまずまず楽しめた。

「おどるポンポコリン」に、『インチキおじさん登場』という歌詞があるが、
インチキおじさんには、なぜか魅かれるものがある。
面白くて、馬鹿馬鹿しくて、
ちょっと哀しい。
本作も、インチキおじさんや、しがない芸人さんへの愛があふれている。
駄目な人へのやさしいまなざしにほっこりさせてもらえる。

主演は三吉彩花さん。
この映画では、彼女が出ずっぱり、踊りっぱなしだから、彼女の映画であると言える。
これまでにもいろいろな映画やドラマに出ておられたようで、中には私が観た作品もあるのだが、
あまり印象はなかった。
本作では、普通のOLが催眠術にかかって歌い、踊り出す、という設定なので、歌やダンスがそれほどすごくなくても違和感はない。
しかし、ハリウッド作品なら、もっと完璧に仕上げてきただろうとは思う。
そこが日本製らしいと言えば言えるし、
ある種のリアリティがあるとも言えるが、
夢の世界には連れて行ってもらえない。
相棒役のやしろ優さんが弾けている。
大切な役柄を、しっかり演じ切られた。

「ダンスウィズミー」は、単純に楽しい娯楽作。
これでいい、と思える痛快さがある。
突っ込みどころは満載。
ツメの甘さもたっぷり。
ダンスや歌のシーンも、ハリウッドと比較すると、なんというか。
だから、
傑作を求めたり、
完成度にこだわったりすると、
あれ?っとなるが、そんなものは求めっこなし。
すっからかんに楽しみましょう。

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