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書評 「弱くても勝てます」 [読書記録]

開成高校と言えば、灘高校と並ぶ、日本有数の超進学校である。
その開成高校の野球部が、「弱くても勝てる」と豪語して、甲子園を目指している?
この本の存在は以前から知っていたが、
いや、いくらなんでも甲子園とか無理でしょう、
と疑念を抱いてしまい、ずっと放置していた。

しかし、このところ、進学校とされている学校の健闘が目立っている。
静岡高校や米子東高校は今年も甲子園に進出したし、
滋賀県の彦根東高校も強い。
激戦区の神奈川では、相模原高校が横浜高校を破った。
ひょっとしたら、開成にも可能性があるのかしらん。
新潮文庫の100冊にも入っているし。
ちょっと読んでみる気になった。

天才たちが集まる学校だけに、何か秘策があるのだろうか。
これまでにないデータに基づいた野球をしているのだろうか。
短い時間での効率的な練習法があるのだろうか。
当然、あるに違いない。
弱いチームが、
甲子園を目指そうというのだから、
何かなければ行けるはずがない。

しかし、
これが、無いのである。
モットーは、
「どさくさに紛れて勝つ」。
エラーなんかどうせなんぼでもしてしまうのだから、そんなことを気にしても仕方がない。
その代わり、こちらも10点も20点も取って勝とうという作戦である。
斬新と言えば斬新だが、
10点も20点も取れるような打者が集まっているわけでもないし、
そのための特別な練習をしているわけでもないので、
絵空事と言えば絵空事である。

とにかくバットを振る、
というのは賛成だが、
自分たちよりはるかに体が大きく、
才能も練習量も負けている野球名門校に勝つ策としては、
あまりにも弱い。

結論として、開成高校野球部が甲子園に行く確率は、
非常に低いと言わざるを得ない。

では、この本がつまらなかったかというと、そんなことはない。
面白かった。
なんとうか、笑えるのである。
それは、力もないのに甲子園を目指していることをあざける笑いでは全くなく、
人間の面白さである。
開成高校の野球部の面々が、実に面白い。
優秀な彼らが、野球という競技の前ではほぼ無力であるところがゆるむ。
受験エリートの限界とかではなく、単なる向き不向きと練習量の問題である。
そのため、なにやら脱力的な面白さがある。

甲子園に行くことはないだろうと思える開成高校野球部だが、
その試合を見てみたい気には、大いになった。
応援したい気にも、大いになった。

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