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映画評 「ラーゲリより愛を込めて」 [映画評]

正直なところ本作については、
予告編を観る限り悪い予感の方が強かった。
二宮和也さん、北川景子さんという人気者の組み合わせから、
甘い展開、甘いエンディングを勝手に予想してしまった。
2020年の「糸」でうならされた瀬々敬久監督が、そんな甘々な映画にするはずもなかった。
終始暗い展開ながら、2時間画面に引き付けられた。
期待していなかっただけに、嬉しい誤算。

ほとんどのシーンがソ連の強制収容所での日々。
死ぬほど働らかされたり、
寒い中こき使われたり、
拷問を受けたり、
殴られたり、
蹴られたり、
と散々な日常が描かれる。
目をそむけたくなるようなシーンの連続だが、
俳優の皆さんの熱演もあり、しっかり観続けることができる。

主演の二宮和也さんの演技力は定評があるところだが、
本作は脇も豪華かつ重厚。
語り手的な役割を務める松坂桃李さんは、今や若手演技派俳優のトップ。
桐谷健太さんの熱い演技が映画を盛り上げ、
安田顕さんの痛い演技がリアリティを与えていた。
Sexy Zoneの中島健人さんが坊主頭で奮闘。
ちょっと抜けた二枚目役の多い中島歩さんが意外な悪役で出演されていた。
もっと見たかったがちょい役。

ロシアのウクライナ侵攻により、
この映画のインパクトがさらに増すことになった。
平和のありがたみもさることながら、
戦争が人の気を狂わせ、
運命を翻弄するところも切実に迫ってくる。

泣ける映画かというと、そうでもないかもしれないが、
ちゃんと作られた映画であった。
ちゃんと作られるのは、そう当たり前のことでもない。

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