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映画評 「遠いところ」 ~ いい映画。しんどいが、いい映画。 ~ [映画評]

いい映画に出会うと、人に勧めたくなる。
同じ感動を味わってもらいたい、
このいい作品を多くの人に観てもらいたい、
と思うからである。
しかし、この「遠いところ」については、人に勧めるのを躊躇う。

いい映画だと思う。
緊張感が途切れなく続き、
脚本がよく、
演出がよく、
役者陣がそれに全力で応えている。

ただし、しんどい。
いい映画だけになおさらしんどい。
このしんどい映画を人に勧めるのはどうだろうと思ってしまう。
途中しんどくても最後に救いがあればいいが、最後までしんどい。

題材的に、ヒットも望めないだろう。
とすると、こんなにいい映画が埋もれてしまうことになりかねない。
それは残念である。
だから、いい映画だと伝えたい。
それでも人に観るように勧めるのは躊躇われる。
観た人だけでも、この映画のよさを広めてほしい。

映画の舞台は沖縄。
17歳の少女が、働かず飲んだくれている夫と幼い息子の3人で生活している。
少女はキャバクラで働いて生計を立てているが、取り締まりが強化されて仕事を失ってしまう。
夫は暴力を振るうようになり、
父親も頼りにすることができず、
少女の孤立は深まっていく。

これが沖縄の現実なのかどうかはよくわからない。
沖縄であろうとなかろうと子どもの貧困はあり、
その貧困は連鎖し、
一番弱いものにしわ寄せが行っているだろう。
それをリアルに、切実に描く。

主演の花瀬琴音さんが、ハードな役どころにとことん立ち向かっている。
役者魂、表現者スピリットをひしひしと感じた。
映画ファンの信任熱い中島歩さん、宇野祥平さんが小さな役で出演されている。
意気に感じられたのだろうか。

最終盤、それまでリアルだった物語が崩れてしまう。
そこが残念。
最後まで貫いてほしかった。

「遠いところ」は、いい映画。
観てね、と軽々しく人に勧められないが、
いい映画。
それは伝えたい。

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