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書評 「散り花」 [読書記録]

中上竜志著の本作は、第14回日経小説大賞受賞作。
プロレスラーが主人公で、
試合の進行に関する段取りのことを意味する「ブック」や、
試合展開やリング外の抗争などに関して前もって決められる仕掛けのことを意味する「アングル」など、
プロレスに関する内幕も描かれる。
そこにあるのは
生身の人間による裏も表もある激しい「闘い」である。

私は子どもの頃、馬場さんの全日本プロレスのファンで、
1977年のオープン・タッグ選手権 「ファンクスvsブッチャー・シーク」に衝撃を受けた。
その後も、
鶴田さんの活躍、
天龍革命、
四天王プロレス、
と見続けたクチである。

作者の中上さんは、私とは違い猪木さんの新日本プロレスのファンで、
武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の闘魂三銃士を見ていたという。
本作も、同期で入団した三人が物語の主軸となる。

プロレスファンならきっと楽しめる作品だと思うし、
エンタテインメントとしてもしっかり成立している。
プロレスってなんだか胡散臭い、と思っている人にも伝わるのではないかと思う。
登場人物の痛みも伝わってくる。

一方、リアルなハードボイルド作品であるにしては、
描かれる試合展開を含めかなり甘い部分もあり、
そこが少し興醒めではある。
リアル路線で行くのならそこを突き詰めてほしかった感がある。

日本にプロレスというスポーツというか文化があってよかったと思っている私としては、
プロレス文学ももっとあっていいと思う。
本作は続編もありそうでそれを楽しみにしつつ、
プロレス文学、プロレス映画が一層多く作られることを祈りたい。

タグ:散り花
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