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映画評 「万引き家族」 [映画評]

「万引き家族」は、第71回カンヌ国際映画祭で、日本映画では21年ぶりとなる最高賞・パルムドールを獲得したことで一気に注目度が増した。
監督の是枝裕和さんは、脚本・編集も務めておられる。
家族を演じるのは、リリー・フランキーさん、安藤サクラさん、樹木希林さん、松岡茉優さん、オーディションで選出された子役の城桧吏くん、佐々木みゆちゃんの6人。

タイトルは「万引き家族」となっているが、全員が万引きを生業にしているわけではない。
ちゃんと働いているものもいるし、若い女の子の最終手段的な働き方をしているものもいる。
そもそも、是枝監督は、
「親の年金を不正に受給していた家族が逮捕された事件に着想を得た」
とされていて、家族の主な収入源はそこである。
では、なぜ「万引き家族」なのか。
是枝監督の作品では「三度目の殺人」もそうだったが、タイトルの意味を考えると、作品の見方がさらに深まる気がする。
万引きを生業にしているのではなく、何かを万引きした家族なのであろう。

虐待や孤立など、重いテーマを扱っている作品であり、映画のトーンは暗い。
しかし、どこかユーモラスな空気も漂う。
それが人間というものだろうと思う。

主演の家族は、当然ながら善人の集まりではない。
社会の被害者というわけでもない。
それがかえって胸に刺さる。

リリー・フランキーさん、安藤サクラさん、樹木希林さんの3人は、さすがの演技。
日本を代表する俳優陣と言っていいだろう。
「ちはやふる」ファミリーの一人、松岡茉優さんは体当たりの演技。
「勝手にふるえてろ」に続いて、印象的な役をものにされた。
子役の城桧吏くん、佐々木みゆちゃんの2人も評判どおり。
見事としか言いようがないはまりっぷりだった。

「万引き家族」は、映画ファンには必見の映画。
映画祭のグランプリ受賞作が必ずいい作品かと言うと、そうでもない気がするが、本作は大丈夫。
映画好き同士で観に行って、さんざん語り合うのにピッタリである。
ただし、PG12指定されているように、子供の鑑賞に堪えられるかと言うと、ちと難しい気がする。
大人の映画である。

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