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「カメラを止めるな!」3度目の鑑賞  ~ 遠くに行ってしまう感傷も少しだけ ~ [映画評]

「カメラを止めるな!」を3度目の鑑賞。
台風接近中にもかかわらず、劇場前にはチケットを求める列が続き、次の次の回を観ることになった。
これは、「カメ止め!」では恒例のことで、はじめて観に行ったときからそうだった。

3回目ともなれば、展開はもちろんのこと、いろいろなセリフも覚えている。
「よろしくで~す」
という女優さんのセリフや、
「メールもしましたよ」
という水に弱い人のクスリとくる言葉も、「そうそう」という感じである。
そして、もちろんのこと、何度見ても面白い。

私は、たまたま、6月に始まった東京での公開初日に、この映画を観た。
年間、それなりの本数の映画を観るので、そこまでの高鳴りは持たずに行ったが、魂の真ん中をガッチリとつかまれた。
抜群に面白く、
底抜けに爽快で、
ぐわんと胸熱くなった。

それ以来、その面白さを広めようと、勝手に頑張った。
ブログに書き、知り合いに伝え、ツアーを組んだりもした。
しかし、面白い映画がヒットするとは限らない。
反対に、私が観て「面白くない」映画がヒットすることもままある。
だから、「これは、きっと社会現象になるよ」と会う人ごとに言いながら、「でも、そんなうまい話はないかな?」という思いもあった。

東京での公開から1月経った今、映画ファンで「カメラを止めるな!」という作品を知らない人はほとんどいないだろう。
ほぼすべてのテレビ局でこの異例の広がりが取り上げられ、
新聞でもニュースとして扱われ、
ネットではそれ以上の騒ぎになっている。
公開館数も、2館 → 7館 → 40館 → 100館 と増えていくらしい。
こんな夢のようなサクセスストーリーが現実になっているのである。

もちろん、嬉しい。
全然関係ない一観客に過ぎないのに、何となく関係者のような気分に勝手になって、自分事として喜んでいる。
一方、
「遠くに行っちゃったなあ」
という、ちょっぴりさみしい思いもなくはない。
知る人ぞ知る映画から、誰でもが知る大ヒット映画へ。
「カメ止め!」は遠くへ行ってしまった。

今時、才能のある若者は、ネットの世界にいるのだろうと思う。
もちろん、それでいい。
しかし、「カメ止め!」を観て、「映画もありか?」と思ってもらいたい。
日本映画はほとんど観ない、という人も少なくないと思う。
しかし、「カメ止め!」を観て、「食わず嫌いは駄目かな?」と思ってもらいたい。
日々の生活を、
「あ~あ」
「つまんねえ」
「かったりぃ」
と思っている人たちに、「カメ止め!」を観て、「ん?」と思ってもらいたい。

どうせここまで来たのなら、もっともっと遠くへ、
行っけ~

タグ:カメ止め!
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もっと盛り上がっていい女子格闘技  ~ RENAが負けたのは複雑も いい試合だった ~ [ヨモヤ]

世界では、とっくの昔に女子格闘技ブームが来ている。
牽引者となったリンダ・ラウジーは、
2015年に、スポーツ界のアカデミー賞といわれるESPY賞で、最優秀女子選手賞を2年連続で受賞したほか、
メイウェザー・ジュニアやゴロフキンらの男子ファイターを抑えて最優秀ファイター賞も受賞した。
総合格闘家の最優秀ファイター賞受賞は男女を通じて史上初の受賞者だった。
経済誌フォーブスの2016年版「世界女子スポーツ選手長者番付」でラウジーは年収1400万ドル(約15億円)で3位にランクイン。
「タイム」誌の「世界を変える30歳以下の人物30人」、
経済紙「フォーチュン」の「40歳以下の最も有力な40人」の1人にも選出された。

ラウジーのバックボーンは、北京オリンピックで銅メダルを獲得した柔道。
ならば、女子の柔道・レスリング大国の日本にも、十分な潜在力があるはずだ。
ブレイクに必要なのは、世界を切り拓くスーパースターの存在とちょっとした幸運だろう。

PRIDEやK-1が引っ張った日本の格闘技ブームが終わりを告げ、ここ数年はRIZINが新たなムーブメントを起こそうと努めている。
ネームバリューのあるベテラン勢に頼り過ぎたカード編成や、
方向性のはっきりしないルールなど、
いろいろ課題が多いとは思うが、女子格闘技、いわゆるジョシカクに力を入れているのは正しい方向性だと思う。

ジョシカクを、そしてRIZINを引っ張ってきたのはRENAだと思うが、彼女のためのトーナメントだと思えた女子スーパーアトム級トーナメントで、昨年の大晦日、赤倉カンナに衝撃的な失神負けを喫してしまった。
意外性があることは、ブームが盛り上がるために必要な要素ではあるが、スターを失うのは辛い。
RENAと浅倉の再戦は当然組まれるべき試合ではあったが、RENAが再度負けてしまった場合のフォローが難しいため、実現には少し時間が必要である気もした。

二人の再戦は、初戦以上の好ファイトだった。
手に汗握る攻防だった。
そして、総合のルールでは、浅倉が一枚上だということもはっきりした。

勝った負けた以上に重要だったことは、この試合がメインに組まれ、生放送されたことだろう。
試合前、RENAはこんなことを語っている。
「昔からの夢だった、女子格闘技がテレビで生放送されて、しかも日本人同士で戦うことになり、たくさんの方々のおかげで私の夢がかない、たくさんの方の夢がかなうことに感謝します」
ジョシカクを引っ張ってきた、RENAらしい言葉である。

そして、試合後、浅倉はこんなことを話している。
「RENAさんは憧れの選手だけど超えなきゃいけない存在だった。今回の試合は複雑だったけど、もっと上の選手とやり合えるようにしたい」
浅倉は、すでに先を見据えている。
「もっと上の選手」という表現を使い、世界に打って出る覚悟を示した。

「女子にしてはすごい」
と言われた時代から、
「女子の方が面白い」
と言われる時代へ。
ジョシカクはまだこれからである。

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今や楽天は1弱ではなく台風の目 [ヨモヤ]

梨田監督が借金20の段階で辞任したとき、楽天はもちろん最下位であり、
5位のロッテまで9.5ゲームも離れていた。
他の5チームは接っていたから、
これでは1弱と言われても仕方がない。
急遽指揮を執ることになった平石監督代行が、
「腹をくくってやる。やる以上は借金返済を目指す」
と決意表明されても、惨憺たるチーム状態であり、とてもまともには受け取れなかった。

梨田監督がお辞めになったのが6月16日のこと。
そして、1月ちょっと経った7月28日現在どうなっているかというと、
楽天の借金は12まで減少している。
つまり、この間に8つも勝ち越しているのである。
そして、5位オリックスとの差は3.5ゲーム。
ついでに言えば、3位ロッテとの差も6.5ゲームである。
こうなると、もう1弱ではない。

躍進の大きな要因は、田中 和基・茂木 栄五郎という若き1.2番コンビが確立されたことである
長打もあるこの二人が先陣を切ることで、相手投手にとってはやっかいな打線になっている。
今江やアマダーも元気いっぱい。
投手陣では、則本の調子が上がらず、松井裕樹もいまだに良かったり悪かったりだが、
岸で勝ち星を計算できる。
何より今は、打線の援護が期待できることが大きい。

もちろん、今からではクライマックス・シリーズ圏内には届かない可能性の方が高い。
それでも、いつでも熱心に応援しておられる東北の方々のことを思うと、こうしてシーズン中に見せ場があったことは嬉しい。
いくらチーム愛があっても、一年中負けっぱなしでは応援するのもしんどいから。

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映画評 「未来のミライ」  ~ 細田さんの作品にこの評は書きたくなかった ~ [映画評]

映画を観るたび、映画評を書くことにしている。
別に誰に頼まれたわけでもない。
だから、書かなくても構わない。
ただ、ひょっとして、誰かが映画を選ぶ時の参考にでもなれば嬉しいな、と思って書いている。
いい映画と出会い、その映画を人に勧められるときの喜びはひとしおである。
しかし、信頼している作り手による凡作に出会ってしまった場合、映画評を書くのが辛い作業となる。

私は、細田守監督に、一方的に恩義を感じている。
何故なら、
『時をかける少女』
『サマーウォーズ』
と、歴史に残る傑作を2作も作ってくださったからである。
この2本を一体何度見たことか。
そして、何度力をもらったことか。
続く、 『おおかみこどもの雨と雪』は、前2作よりはやや落ちるが、それでも胸がキュンとなる佳作だった。
しかし、2015年に公開された 『バケモノの子』は、細田さんに寄せている期待と信頼のレベルからすれば、とてもではないが、水準をクリアするものではなかった。
だが、『未来のミライ』を観てしまった今では、駄作と思えた『バケモノの子』さえ、まずまずの作品に思える。

まさか細田さんの作品にこんな表現をすることになるとは思わなかったが、『未来のミライ』は、全くなっていない映画であった。
正直なところ、よかった点を思い出すことができない。
設定もストーリーも、なにもかもいただけなかった。

主人公の4歳の男の子、くんちゃんが、時をかける(「また?」「そう、また」)のだが、その意味や必然性がこれっぽっちも伝わってこない。
エピソードも断片的であり、印象も薄い。

正直なところ、予告編を始めて観たときから、「これはヤバイのでは?」と心配していた。
しかし、細田さんのことだから、本編はきっとしっかり作られているのだ、と思おうとした。
だが、本編は予告編よりもさらにまずかった。

さらに、あまり言いたくないのだが、くんちゃんの声を演じられた上白石萌歌さんが、全くはまらなかった。
せめてくんちゃんの声が上手な声優さんであれば、少しは救われたのかも知れないが、どうにもならない脚本にどうにもならない声が乗ってしまい、作品自体がどうにもならなくなってしまった。
4歳の男の子を演じられる声優さんは、ほかにいくらでもいただろうに・・・。

細田守監督は、『時かけ』以降、きっちり3年のインターバルで新作を発表して来られた。
寡作とまでは言えないかも知れないが、それなりの間隔を空け、満を持して、丁寧に映画を撮られてきたと思う。
しかし、本作を観ると、大変失礼ながら、一体3年間は何だったのかとさえ感じてしまう。
期待し、信頼している監督さんだけに、なおさら悲しい。

3年後、細田監督の新作が公開されたら、もちろん観に行く。
一生分の恩をいただいた気持ちに勝手になっているのだから、それくらいの忠誠心は当然だ。
だが、『未来のミライ』を観た後では、期待値はグッと低くなっている。
悲しいかな。
悲しいかな。

興行成績もさえないだろう。
とにかく、残念至極な作品であった。

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インフレは経済を破綻させる  ~ ベネズエラの物価上昇率は100万%に ~ [経済を眺める楽しみ]

日本は長くデフレに苦しめられている。
出口が見えそうになっては遠のくといったことの繰り返しで、安定した2%の物価上昇はなかなか達成できない。
確かにデフレになると、モノが売れにくくなるし、借金を抱えている人は苦しくなるし、企業の採算も取りにくくなるなど、弊害が多い。
しかし、インフレよりマシだと思っている人は少なくないと思う。
「物価が下がって何が悪い」と思っている人も多いだろう。
少しでも安い店を探すためにチラシを舐めまわすようにご覧になっている方からすれば、モノは安いほどいいというのが正直なところだろう。

デフレは日本経済をむしばみ、体力を奪ってきたが、経済が破綻するまでには至っていない。
片やインフレはどうだろう。
目指す2%程度のインフレなら心地いいだろうが、10%、20%となると生活は苦しくなるだろう。
物価はすいすい上がっても、給料が上がるのには時間がかかるのが普通だから。

さらに、これが月額50%超といったような、ハイパーインフレになったらどうだろう。
デフレの場合、下がっても10%とかいったレベルだが、インフレには天井がない。
物価が短期間に2倍にも3倍にもなれば、国民生活は、完全に崩壊してしまうだろう。

現在、南米のベネズエラが、ハイパーインフレに苦しんでいる。
IMFによれば、ベネズエラの物価上昇率は、
「2018年末までに100万%に達する」
とのことである。
100円だったものが、100万円になるということだ。
これでは、経済は崩壊し、国民生活は成り立たなくなる。

今の日本において、インフレを恐れて金融緩和の手を緩めることはないと思う。
その一方で、インフレの恐ろしさは知っておきたい。
アルゼンチンやブラジル、ロシアといった大国でも程度は違うが、激しいインフレが起こったことがあることも押さえておきたい。

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いよいよ感染爆発期に突入か  ~ 「カメラを止めるな!」の露出が急拡大 ~ [映画評]

そこはかとない予感はあったものの、そこまでの期待もせずふらっと観に行った「カメラを止めるな!」。
観終わった瞬間から興奮は止まらず、
『超オススメ! 一年に一本あるかないかレベルの快作!』
と題したブログを書いた。
https://matoko.blog.so-net.ne.jp/2018-06-25

その後、この幸せを誰かと分かち合いたいと思い、はじめてツアーを組んで映画を観に行った。
https://matoko.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08

「カメラを止めるな!」は、
「面白いけれど、一部の人にしか受けない」という作品ではない。
「面白いけれど、心に残るものがない」という作品ではない。
「面白いけれど、一回観れば十分かな」という作品でもない。
笑って泣いて胸熱くなる、奇跡のエンタテインメント作品である。

「カメ止め」の感染者は増大し、新宿K'sシネマでは72回連続満席というとんでもない記録を作っているようだ。
さらに、「HKT48」の指原莉乃さんが、SNS上で「会う人全員にすすめてる」と表明されたほか、
「ZIP」や「めざましテレビ」でも取り上げられたらしい。
そして、ついに上映館が拡大される。
TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 新宿ほか全国40館以上で上映されることが決まったというのである。
定員80人のK’sシネマから始まった感染が、8月3日にはTOHOシネマズ 日比谷という超メジャー劇場で上田監督やキャスト陣が登壇する事態に進展している。

ほんわりした予定調和的な映画しかご覧になっていない方々が、この映画を観たらどんな感想を持たれるだろう。
映画の可能性がここから広がっていくかもしれない、などといった夢まで見てしまう。
「お金はなくても、アイデアとそれを実現する熱意があれば、100分で世界を変えられるんだ」ということを信じる人が増えるかも知れない、などと妄想は広がってしまう。

感染は、ここからが本番。
将来、2018年と言って思い出すのが、
サッカーのワールドカップや平昌オリンピックと並んで、
映画「ちはやふる」の完結であったり、
「カメ止め!」の公開であったり、
したら素敵である。

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柳田、秋山、近藤 パ・リーグのハイレベル首位打者争いに注目 [ヨモヤ]

平昌オリンピック・パラリンピック、
ロシアワールドカップ、
というビッグイベントが終わり、日本は野球の夏である。
8月は甲子園で盛り上がるのが常だが、プロ野球パ・リーグの首位打者争いにも注目していただきたい。
ソフトバンクの柳田、西武の秋山、日ハムの近藤の3人が、ハイレベルの争いを展開しているからである。
チームも上位を争っているだけに、3人のこれからの成績が、優勝を左右しかねない。

現在、トップにいるのがソフトバンクの柳田。
フルスイングが代名詞であり、三振の数も少なくないが、それでいてこの高打率。
ホームランは2位、打点は4位と、今三冠王に近い存在である。
盗塁も7位であり、トリプルスリーかつ首位打者若しくはホームラン王という記録も狙える。

2位が西武の秋山。
2017年の首位打者であり、年間安打数の日本記録保持者。
近年、長打力も身につけてきており、ますます隙のない選手になってきている。

3位は日ハムの近藤。
まだ24歳だが、打撃については職人的な冴えを見せる。
昨年は、シーズン途中で怪我のために離脱してしまったが、それまでの打率が脅威の.413。
4割という夢の数字を現実的に感じさせる選手である。

この3人の争いで、最も首位打者に近いのは、西武の秋山だろう。
タイトル争いの経験も豊富だし、足が速く、内野安打を稼げる可能性が高いのも有利である。
柳田は、勝負を決める一発を期待される存在であり、.350近辺の打率を維持し続けるのは、だんだん厳しくなってくるのではないかと思う。
ただし、私が推すのは日ハムの近藤である。
穴のないバッティングは、リーディング・ヒッターの名にふさわしい。
経験がないのが不安材料だが、彼の打撃テクニックと選球眼のよさは、それを補って余りある。

ソフトバンクのもたつきにより、パ・リーグは大混戦となっている。
首位打者争いともども、最後の最後まで分からない展開になることを期待したい。

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映画評 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 [映画評]

この映画は、吃音(きつおん)が大きなテーマとなっている。
一般的な病気とは少し違うこの特質を、エンタテインメントで取り上げるのはかなりの難作業だろうと思う。
その難しい課題に挑戦されたことは、ある種の心意気であろう。
しかし、挑戦しただけで評価されるわけではない。
作品としてキチンと成立していなければ、単なる試みに過ぎない。
残念ながら本作は、成功したとまでは言えない。

ストーリーは、
自分の名前も言えない激しい吃音で周囲に溶け込めない志乃は、こちらもクラスで浮いていた加代とひょんなことから知り合いになる。加代は音楽を志していて、歌ならスムーズに声が出る志乃とバンドを組むことになる。二人は徐々に心を開き、路上ライブを行うなど、楽しい夏を過ごす。しかし、そこへ同級生のお調子者が参加してきて風向きが変わってくる・・・
というものである。

前半は、まずまずの展開だった。
あちこち過剰な演出はあったものの、許容できる範囲であり、主演の女の子二人の演技もなかなかだった。
前半を無難にこなした映画を観ているとき、私は、
「その調子、その調子、なんとか最後までしっかりこなしてくださいますように」
と願う。
その願いは叶うこともあれば、叶わないこともある。
この映画では叶わなかった。

後半は、まさにぐずぐず。
男が絡んできて、風向きが変わっていくのだが、その意味が全く伝わらない。
ラストに向けて、頭にクエスチョン・マークをつけさせられたまま走らされてしまう。
最後、主人公が切々と訴えるシーンがあるのだが、そこまでが疑問だらけなので、残念ながら胸に届かない。
どんなに熱演されても、胸に響かない。

原作でどう表現されているのか知らないが、映画を観る限り、主人公が吃音である意味が全くわからなかった。
単に周囲に溶け込めない女の子、とすれば十分である気がした。
物語の根本のところがストンと落ちていないのだから、感動につながるわけはない。

吃音の女の子を南沙良さんが、音楽好きな女の子を蒔田彩珠さんが演じる。
南さんは、泣き顔のとき鼻水をダーダー流すなど、渾身の演技をされていた。
蒔田さんは、存在感を十分に示しておられたが、演出であるにしても、クラスへの溶け込めなさの演じ方がステレオタイプ過ぎて残念だった。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は題材を十分に活かし切れなかった作品。
何かを表現しようとしている空気は伝わるので、不快な作品ではないが、映画的なエクスタシーを与えてくれるところまでは遠かった。
とはいっても、南沙良さん、蒔田彩珠さんのファンの方にとっては見逃せない作品だし、爽やかな後味があるので、青春映画、バンドものなどが好きな人にも足をお運びいただければと思う。

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進化するモンスター井上尚弥が世界のスーパースターになる日も近いか [ヨモヤ]

多団体化、階級の細分化が進み、ボクシングの世界チャンピオンの重みはすっかり失われた。
今や、世界チャンピオンになるだけでは、一般的な知名度さえ獲得することができない時代になっている。
また、チャンピオンあちこちにいる状況になり、誰が本当に強いのかが実にわかりにくい。

こうした状況に、ボクシング界が危機感を持ったのか、ビジネスチャンスととらえたのか、
WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)
という企画が始まった。
これは、各階級にいるWBA、WBO、WBC、IBFという主要4団体のチャンピオン及び強者と目される面々によるトーナメントを行い、真の王者を決めようというものである。
必然的に、チャンピオン対チャンピオンの対戦が見られるようになるし、団体の威信をかけた戦いともなる。

このビッグイベントの第2シーズンとしてバンタム級が設定され、日本が誇るモンスター井上尚弥が、優勝候補としてエントリーしている。
そして、1回戦の相手が元バンタム級スーパーチャンピオン、フアン・カルロス・パヤノに決定した。
もしこのトーナメントで井上が優勝するようなら、正真正銘のスーパースターの仲間入りということになる。

その井上の熱海での合宿メニューが公開されていたが、読んでいるだけで吐き気を催すような内容である。
具体的には、
午前中に砂浜ダッシュを行った後、午後は階段を使ったトレーニング。
30段のダッシュ×4本、
68段×4本、
114段×5本、
手押し車で30段×10本、
空気椅子30秒から30段のダッシュを5本、
両足でジャンプしながら68段上るのを5本、
馬跳び20回から114段のダッシュを3本、
約300メートルの上り坂ダッシュ3本、
というものである。

若い頃、センスの良さで相手を倒してきたボクサーが、どこかで壁にぶつかることがある。
順調に勝ち星を重ねてきたボクサーが、一定レベル以上の選手と戦うと途端に良さを発揮できなくなることがある。
井上はそうではない。
井上は、デビュー時から怪物と言われていたが、その強さを日々進化させている。
そのこと自体がモンスターである。

まずは一回戦のパヤノ戦を突破するのが先決だが、その後の準決勝、決勝となると、ボクシングの枠を超えての話題になることも期待される。
世界のスーパースターへ、絶好の舞台は整った。

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観光地に必要なものとは  ~ トイレもWifiもなくても集まるところには集まる ~ [ヨモヤ]

外国人の方に来てもらおうとするとき、環境整備に努められる地域がある。
トイレをしっかり整備して、
駅にも街中にもWifiをめぐらせて、
案内板も多国語にして、
といった感じである。

観光庁が実施した
「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」
によると、訪日外国人観光客が感じる訪日旅行で困ったことの上位は以下のようだったらしい。
第1位 「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」
第2位 「無料公衆無線LAN環境」
第3位 「多言語表示の少なさ・わかりにくさ(観光案内板・地図等)」
これを見て、なるほど、多言語化だWifiだとなるのだろうか。

しかし、このアンケートに答えている人たちは、すでに日本に来ている人たちである。
つまり、
「多言語化されていないし、Wifiも整備されていないから日本には行かない」
と言っているのではなく、
「日本に来たくて来たが、困った点を挙げろと言われたらこんなところか」
ということを答えているのである。
例えて言えば、結婚した旦那の不満な点を挙げているようなものか。

さて、イタリアのローマと言えば、世界に名だたる観光地である。
パリやロンドンに並ぶ存在と言っていいだろう。
そのローマの環境と言えば、
Wifiは不十分、
地下鉄は汚い、
公衆トイレはほとんどないうえに、あっても有料で不潔、
狭い道路を駐車車両がふさいでいる、
車いすや体の不自由な人に全くやさしくない段差だらけの道路、
と、万全とはほど遠い。
それでも観光客は世界中から集まってくる。
当たり前のことだが、
Wifiがあるから、
言葉が通じるから、
トイレがきれいだから、
といったことは、旅行先を選ぶ第一基準にはほとんどならないのだ。
それを望むなら、自宅で十分である。

そもそも、困ることがない旅行は楽しいのだろうか。
むしろ、困るために行くのではないか、などと思ってしまう。

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