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映画評 「パンク侍、斬られて候」 [映画評]

映画「パンク侍、斬られて候」が賛否両論を起こしているようだ。
町田康さんの江戸時代が舞台の小説を、
宮藤官九郎さんの脚本で映画化、
というから、ぶっ飛んだ内容になることは予想がつくところであり、
そうなると、「合う・合わない」が出てくるのもやむを得ない。

私は楽しめた。
ハチャメチャな話なのだが、しょっぱなからハチャメチャであることを宣言しているので、そのつもりで映画に入れる。
結果的にハチャメチャになってしまったのではなく、そのつもりで作られているので、こちらもそのつもりで見ればいい。
ナレーションが被るスタイルや、会話のテンポなど、独特の音楽が流れている感じである。

主演の綾野剛さんはもちろん、
豊川悦司さん、國村隼さん、東出昌大さんらの大袈裟な芝居っぷりがおかしい。
さらに、染谷将太さん、浅野忠信さんの突き抜け方は半端ない。
それぞれのファンの方はどう思うのかわからないが、もともとそういう役者さんでもあると思う。
彼らの演技を楽しむだけで、一見の価値はあると思う。

メガホンを取ったのは石井岳龍監督。
石井岳龍監督と言われてピンと来ない人も多いだろうが(私もその一人)、
「狂い咲きサンダーロード」や「逆噴射家族」で知られる石井聰亙さんが改名されているものである。
これだけのスケールで、
これだけの馬鹿馬鹿しい作品を作り上げられるのは、
そんじょそこらの監督ではできないと思う。
「ひどい」「わけわからん」
などと書かれているレビューも多いが、そこらにあふれている凡庸な映画よりは、ずっとよかった。

しかし、思う存分満喫できたかといえば、そうではない。
まず、ちと長い。
作品の世界観に漬かったとしても、だんだんダレてくる。
131分の作品なのだが100分だったら、もっとよかった。
また、ラストに向けての唐突感が興を醒ます。
綾野さんが炸裂するのもお猿さんが天に昇るのも(何言ってるのかわからないと思うが)、
それまでのフリが活きていないから、「へ?」という感じである。
北川景子さんによるオチの部分も、急に当たり前の展開で拍子抜けする。

「パンク侍、斬られて候」は、観る人を選ぶ映画。
ノリノリで楽しめる人もいれば、嫌悪感を覚える人もいる。
ハードルは低くないが、観客に媚びる映画よりは気持ちいい。

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