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映画評 「未来のミライ」  ~ 細田さんの作品にこの評は書きたくなかった ~ [映画評]

映画を観るたび、映画評を書くことにしている。
別に誰に頼まれたわけでもない。
だから、書かなくても構わない。
ただ、ひょっとして、誰かが映画を選ぶ時の参考にでもなれば嬉しいな、と思って書いている。
いい映画と出会い、その映画を人に勧められるときの喜びはひとしおである。
しかし、信頼している作り手による凡作に出会ってしまった場合、映画評を書くのが辛い作業となる。

私は、細田守監督に、一方的に恩義を感じている。
何故なら、
『時をかける少女』
『サマーウォーズ』
と、歴史に残る傑作を2作も作ってくださったからである。
この2本を一体何度見たことか。
そして、何度力をもらったことか。
続く、 『おおかみこどもの雨と雪』は、前2作よりはやや落ちるが、それでも胸がキュンとなる佳作だった。
しかし、2015年に公開された 『バケモノの子』は、細田さんに寄せている期待と信頼のレベルからすれば、とてもではないが、水準をクリアするものではなかった。
だが、『未来のミライ』を観てしまった今では、駄作と思えた『バケモノの子』さえ、まずまずの作品に思える。

まさか細田さんの作品にこんな表現をすることになるとは思わなかったが、『未来のミライ』は、全くなっていない映画であった。
正直なところ、よかった点を思い出すことができない。
設定もストーリーも、なにもかもいただけなかった。

主人公の4歳の男の子、くんちゃんが、時をかける(「また?」「そう、また」)のだが、その意味や必然性がこれっぽっちも伝わってこない。
エピソードも断片的であり、印象も薄い。

正直なところ、予告編を始めて観たときから、「これはヤバイのでは?」と心配していた。
しかし、細田さんのことだから、本編はきっとしっかり作られているのだ、と思おうとした。
だが、本編は予告編よりもさらにまずかった。

さらに、あまり言いたくないのだが、くんちゃんの声を演じられた上白石萌歌さんが、全くはまらなかった。
せめてくんちゃんの声が上手な声優さんであれば、少しは救われたのかも知れないが、どうにもならない脚本にどうにもならない声が乗ってしまい、作品自体がどうにもならなくなってしまった。
4歳の男の子を演じられる声優さんは、ほかにいくらでもいただろうに・・・。

細田守監督は、『時かけ』以降、きっちり3年のインターバルで新作を発表して来られた。
寡作とまでは言えないかも知れないが、それなりの間隔を空け、満を持して、丁寧に映画を撮られてきたと思う。
しかし、本作を観ると、大変失礼ながら、一体3年間は何だったのかとさえ感じてしまう。
期待し、信頼している監督さんだけに、なおさら悲しい。

3年後、細田監督の新作が公開されたら、もちろん観に行く。
一生分の恩をいただいた気持ちに勝手になっているのだから、それくらいの忠誠心は当然だ。
だが、『未来のミライ』を観た後では、期待値はグッと低くなっている。
悲しいかな。
悲しいかな。

興行成績もさえないだろう。
とにかく、残念至極な作品であった。

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