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規制改革にはマスコミや国民の意識改革も必要  ~ 孫社長の怒りで思う ~ [ヨモヤ]

ソフトバンクグループの孫正義社長は、政府といい関係を築くのが上手な経営者だと思う。
アメリカのトランプ大統領と緊密な連携を取られているのがその典型的な例だが、国内でも政府との摩擦を極力抑えながらビジネスを進められている印象がある。
だから、ライドシェア(相乗り)をめぐる舌鋒の鋭さには、意外の感を持った。

孫社長は、日本でライドシェアサービスが禁止されていることについて
「こんなばかな国がいまだにあるということが、僕には信じられない」
とおっしゃったというのである。
「ばかな国」という直球の表現をされているが、これは政府の政策への痛烈な批判である。
孫社長はさらに
「(ライドシェアサービスで)需要を予測することによって、より交通の混雑が減り、より事故が減り、より需要と供給をマッチできるということがいま米国や中国、欧州などいろいろな国で起きている」
と話され、他国でできていることができていないことについて、
「国が未来の進化を自分で止めている」
「過去を守りたい、未来を否定する、もう考えられない状況だ」
と続けられ、怒り心頭のご様子である。

急にこんなことをおっしゃるはずはないから、おそらくいろいろな背景があるのだろう。
また、自分のビジネスを進めたいが故のパフォーマンスである、との見方もあると思う。
それらについてはよくわからないが、いろいろな規制において、日本が厳し過ぎるという話はよく聞く。
その結果として、新しい技術や産業が、他国で次々と始められ、おいしいところを全部持っていかれているとの指摘もよくなされる。

規制の厳しさを説明する理由としてよく挙げられるのが、孫社長もおっしゃっていたようだが、「既得権益」の擁護である。
ライドシェアで言えばタクシー業界、薬の販売で言えば薬局業界、といったように、規制が緩和されると厳しい状況に追い込まれる業界があり、それを守ろうとするあまり、進歩から取り残されているというのである。
確かにその面は小さくないと思うが、実際には、マスコミや世論の動向も大きな力を持っている気がする。
例えばライドシェアでも、利用者の利便性は上がるし、新たな需要が喚起され、雇用も生み出す可能性があるというメリットに対し、現在の運転手さんたちが苦しくなる、賃金が下がる可能性がある、事故の可能性が増す、などのデメリットがあり、マスコミや世論はマイナス面に注目しがちである。
さらに、規制緩和によって何か起きた場合、それによる経済効果は一切無視され、いきなり政府の責任が追及される傾向が強いような気がする。
こうした状況では、国の役所もなかなか前向きにはなりにくい。

もちろん、批判されそうだから尻込みする、というのでは政府の役割を果たしているとは言えない。
摩擦が予想されたとしても、それを上回るメリットがあると判断できれば、果敢に取り組むべきであろう。
しかし、プラス面は評価されず、何かあったときの責任ばかりが追及されるとあっては、なかなか元気に向かい合うことが難しいというのも、人情としてはよく理解できる。
言い訳にはならないだろうが。
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