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映画評 「トイ・ストーリー4」 ~ 単体としてはほぼ完ぺき しかし4として見ると消沈 ~ [映画評]

「トイ・ストーリー」は特別な映画である。
素晴らしい第1作目、
完璧な続編となった2作目、
奇跡的な傑作となった3作目。
毎回映画ファンの予想を超える素晴らしい作品が届けられてきた。
そして、「トイ・ストーリー」とファンとの間には強い絆が結ばれた。

ビジネス面でも、「トイ・ストーリー」はまさに特別である。
「トイ・ストーリー」を作ったのは、ご存じピクサー。
自分が作ったアップルを首になっていたスティーブ・ジョブズが出資者の一人となって設立した会社である。
そして、「トイ・ストーリー」は、ピクサーとしての長編アニメ第1弾。
これが大ヒットとなった。
もし「トイ・ストーリー」がなかったら、ピクサーは継続して事業ができなかったかもしれない。
ひょっとしたら、ジョブズがアップルに復帰することもなかったかもしれない。
そうしたら、iPHONEも生まれなかったかもしれない。
「トイ・ストーリー」は、なにものにも替えられない作品なのである。

「4」については、ファンからの悲痛な叫びがネットを埋めていた。
ピクサーが「トイ・ストーリー」を作る以上、そんなひどいものになるはずはないと思うものの、観た人の評価は散々。
心配が募った。

それでも、観てみたら、やはり面白い。
ディズニーの新作として見れば、文句のない作品と言えるだろう。
最初から最後まで息つく間もない展開。
笑えて、ハラハラして、しんみりして。
キャラクターの個性を活かしつつ、様々な障害をアイデアで乗り切らせるのだが、
それをしっかり描く脚本の素晴らしさにはうならされた。
さすがとしか言いようがない。
天才の仕事に息を飲む。

しかし、である。
これは「トイ・ストーリー」。
ディズニーの新作としてさすがに面白い、
というのは誉め言葉にはなるまい。
「トイ・ストーリー」シリーズとして観た場合、心底がっかり意気消沈である。
ウッディがとにかく頑張るのだが、何のために頑張っているのか、どうにも腑に落ちない。
娯楽作と割り切れば腑に落ちなくても全然かまわないのだが、これは映画史に残る「トイ・ストーリー」。
肝心の設定がスカスカではどうにもならない。
バズの描き方もあんまりだ。
単なる間抜けキャラ扱いで、ウッディとの友情さえちゃんと描かれない。
おもちゃとしての制約がありながら、それでもなんとか工夫して解決していくのが面白かったのに、
今作ではほとんどなんでも出来てしまう。
やれやれ。

オチもそれはない。
「その結末はあなたの想像を超える──」
というのが売り文句なのだが、悪い方に超えられても悲しくなるだけだ。

残念ながら、「4」からは別物、と考えるべきなのだろう。
あの素晴らしかった「トイ・ストーリー」は、完璧な「3」で終わり、
「4」からは娯楽映画のプロが、その場喜ばせるために全力を挙げる作品に変わったのだろう。
天才たちの仕事だから、それで十分に面白い。
ほかのディズニー作品と同じように。

みんなの「トイ・ストーリー」は終わってしまったが、どんなものにも終わりはある。
(多分、続編は作られるだろうが、もう「トイ・ストーリー」としては観ない)
出来れば、タイトルは変えてもらいたいが、変えると商売上よろしくないのだろうから仕方がない。

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