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映画評 「新聞記者」 [映画評]

映画「新聞記者」がヒット中である。
公開館が少ないという事情はあるが、都内では満席となる映画館が続出している。
当初、あまり観る気はなかったのだが、これだけ評判が広がると食わず嫌いはよくないと思い直した。
一度観に行ったら満席で入れず、今回はそのリベンジ。

現役の新聞記者である方(いろいろな意味で有名な方)の著作がもとになっており、
フィクションではあるものの、現実に鋭く切り込む作品を期待したのだが、
かなり前半でリアリティのある作品ではないということがわかる。
悪い意味で漫画である。
一部の官僚組織を悪役に仕立てているのだが、いかにも悪役らしい雰囲気でそれをお届けされている。
仮面ライダーのショッカーみたいな感じ。
それでも、エリート集団とされる官僚らしく、頭脳をフルにつかった悪事をしてくるのならともかく、
やっているのはこまめなネットの書き込みレベル。
なんだこりゃ?

そういうことならと、途中からこちらも真面目に観るのは諦めて、
「そんな奴はいないよ」
などと心の中でツッコみながら観るモードに切り替えた。
そうやって観るとツッコみどころは満載なのだが、だからと言って面白く観られるわけではない。
なんだこりゃ?
と、心の中で繰り返しつぶやくこととなった。

周知のとおり、この映画は反政権的思考に貫かれている。
正直、そこがウケているのだと思う。
私としては、なんであれ、しっかりした作品であることを期待して観に行った。
しかし、しっかりした作品であることは、最初から目指されていない作品だった。

この映画を観て、
「このままではいけない」
「変えるために何かしなきゃ」
と思われる方もおられるのだろう。
それはそれで結構なことだとは思うが、映画ファンとしては、
なんらかのメッセージがあるのなら、なおさらしっかり作ってほしかった。
これでは・・・

監督の藤井道人さんの作品では、前作の「デイアンドナイト」で感銘を受けた。
重いテーマに真正面から向き合い、逃げずに撮り切った姿は素晴らしかった。
今作は、同じ人が撮ったとは思えない軽さだった。

主演の松坂桃李さんは熱演されているが、あまりに脚本が陳腐で気の毒だった。
ダブル主演は、韓国人女優のシム・ウンギョンさん。
彼女のたどたどしい日本語が気になったという人が多いようだが、私はすっと入れた。
新聞記者らしい役作りもはまっていたと思う。

映画「新聞記者」は、真面目に観ると「なんだこりゃ?」となってしまう作品。
かといって、ハチャメチャトンデモ映画でもない。
現政権がお嫌いな方には響くのかもしれないが、
この作品が響いてしまうのも、なんとも複雑である。

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