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映画評 「ベイビー・ブローカー」 [映画評]

第75回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞及びエキュメニカル審査員賞受賞作。
佳作を次々に生み出す是枝裕和監督がメガホンを取り、
「パラサイト 半地下の家族」などのソン・ガンホさん、
「空気人形」などのペ・ドゥナさんなどが出演。
撮影・音楽にも、韓国映画界の精鋭が参加している。

赤ちゃんを売買するブローカーを描くのだが、
彼らは悪人というわけではない。
むしろ憎めないドジな存在、という感じ。
テーマも、韓国社会の暗部を描く、
というものではまったくない。
もう少し軽く、コミカルな感じ。

バラバラに集まった面々がいつしか疑似家族のようになっていく。
是枝監督の傑作「万引き家族」と同様に。

的確な演出とセリフ、俳優陣のしっかりした演技で、
楽しく観ることができる。
ただ、あちこちストーリーに無理が生じている。
ラストの展開も強引過ぎるというか、無茶というか。
わかりにくくもあって。

改めて「万引き家族」はまさにパーフェクトな傑作だった。
アカデミー賞を受賞した「パラサイト」がかすむほどに。
それと比べると本作は、ちょっと甘い点が多過ぎる感じがした。
エンタテインメント作品として楽しめはするけれど、
凄いものを観た、という気持ちにはなれなかった。

6月29日のNHK「クローズアップ現代」が、韓国で撮影に臨む是枝監督を特集していた。
そのなかで、韓国の国立映画学校が取り上げられていた。
「パラサイト」のポン・ジュノ監督もそこの出身らしい。
国を上げてクリエーターを育てる姿勢は、日本も大いに参考にするべきと感じた。

「ベイビー・ブローカー」は、楽しく観られる娯楽作。
「万引き家族」のような傑作を期待すると「あれ?」とはなるけれど。

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