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映画評 「エルヴィス」 [映画評]

バズ・ラーマン監督作品。
バズ・ラーマンと言えば、
一般に「ロミオ+ジュリエット」「ムーラン・ルージュ」という作品が挙がるのだが、
個人的に忘れられないのは監督デビュー作だった「ダンシング・ヒーロー」という作品。
わかりやすいクライマックスシーンにしびれた記憶がある。
これが1992年の映画で、かれこれ30年前。
まだ覚えているくらいだから、よほど印象深かったのだろう。

「ダンシング・ヒーロー」も音楽映画であり、
本作でも、同じような快感を得られると期待したのだが、
あれまあ、なんとも不完全燃焼。
エルヴィスの歌を楽しむこともできないし、
物語に酔うこともできない。

フレディ・マーキュリーの半生を描いた「ボヘミアン・ラプソディ」の大成功の後、
ビッグネームの伝記的音楽映画が作られるようになった。
本作もその系譜に連なるものだと思うが、
ちょっと苦い面に寄り過ぎた気がする。
甘い成功物語にしたくないという思いがあったのかもしれないが、
徹頭徹尾暗い話にされては観ている側はしんどい。

なぜそうなったかというと、エルヴィスのマネージャー役の存在がいやらしく、
しかもそれを描き続けたから。
トム・ハンクス演じるこのマネージャーが、
エルヴィスの行く手をことごとく遮る。
屈折していてもなんでもいいから愛のかけらがあればいいのだが、
それすらも見えてこない。
実在の人物で、悪名高いらしいのだが、
なぜこの人にスポットライトを当て続けたのか。

プレスリーを演じたのは、オースティン・バトラー。
プレスリーの明るさ激しさ弱さを見事に演じ分け、
歌唱シーンも絶品。
おそらく代表作になるだろう演技だった。

「エルヴィス」は、なんともしんどい映画。
キング・オブ・ロックンロールを描くにしては、暗過ぎる。
成功者にも暗い面があるのは当然だが、
本作はちとしんど過ぎた。

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