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映画評 「こちらあみ子」 [映画評]

芥川賞作家・今村夏子さんのデビュー小説の映画化。
森井勇佑監督は、これが長編デビュー。

主人公は広島で暮らす小学5年生のあみ子。
あみ子は、少しというかだいぶ風変わりな女の子であり、周りは彼女に振り回される。
それでも序盤は、
やさしい家族に見守られて元気に過ごしていた。
しかしある事件を境に、
穏やかだった父も、
優しかった母も、
味方だった兄も、
みんなあみ子から離れて行く。
それでも、先生や友達に支えられるのならまだいいが、それも全くない。

この展開はしんどい。
風変わりなあみ子を、
家族が一人も守ってくれない、かばってくれない。
周囲にも誰もいない。
どんな気持ちで映画を観ればいいのかわからなくなってしまった。
厳しい展開が最終盤まで延々と続く。

ラストシーンでのあみ子の元気な声で一気に救われる。
この世で生きていくという決意に胸がすく。
のだが、それにしても。
悪気のない天真爛漫な女の子を誰一人守ってあげない。
それどころか、遠ざけたり暴力を振るったりする。
身内のものまで。
観ていて辛かった。

あみ子役は、オーディションで選ばれた大沢一菜ちゃんという女の子が演じた。
2011年生まれというから、現在11歳。
撮影時は10歳だったろうか。
力強く自然な演技で、映画を引っ張ってくれた。
ただ、後半中学生の役があるのだが、そこは違和感ありありだった。
あみ子だから、違和感あっていいのかもしれないが、しっくりは来なかった。

お父さん役に井浦新さん、お母さん役に尾野真千子さん。
この二人が十分に活かされたとは言いにくい。

「こちらあみ子」は、観るのに我慢が必要な作品。
しっかり丁寧に作られた映画で、その点に好感を持つし、
ラストシーンの見事さに監督の手腕もうかがえるのだが、
家族の描き方がちとしんど過ぎる。
それでも壊れない魂は描けているし、
しんどい映画を撮り切る覚悟もわかるのだが。

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