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映画評 「夜明けまでバス停で」 [映画評]

本作は、キネマ旬報ベスト10で第3位となり、
日本映画監督賞、日本映画脚本賞をダブル受賞された。
これは観ておかないと、と思い遅ればせながら。

たまたま観に行った映画館では、脚本を担当された梶原阿貴さんのトークイベントがあり、
作品に込めた思いなどもお聞かせいただいた。
お話も上手で楽しい時間だった。
そんなわけで情も移ったのだが、
そんなこんなの加点要素を足しこんでみても、
「はて、なんでこんなに評価されているんだろう?」
と首を傾げてしまった。

映画に携わる人たちに、
反体制、
反権力、
的な要素をお持ちな方が多いのはわかる。
しかし、それと作品の評価は分けていただきたいものである。

本作は弱いものに寄り添っていて、
世の中に、政治に、一矢報いるものになっている。
しかし、なんと言っていいのか難しいが、一番近い言葉で言えば、ゆるい。
展開も、演出も、なんと言っていいのか難しいが、一言で言えば、ゆるい。
最初のシーンのBGMから、ゆるい。
別の表現で言えば、ぬるい。
そっちに振れるなら、もっと突き詰めてほしかった。
これは、「新聞記者」という映画でも思ったことである。

後半、大きな展開があり、
エンディングでもそれを膨らませた映像が挟まれる。
しかし、そこに説得力はない。
主人公の思いや動機は何なのだろう。
体制側に一泡、という感じなのだろうか。
なんとも、ゆるい。

役者の皆さんは、皆さんいい演技。
追い詰められていく板谷由夏さん、
やるべきことに目覚めていく大西礼芳さん、
最悪の上司役の三浦貴大さん、
日本で虐げられ続けているルビーモレノさんなど、
わかりやすく、映画の趣旨を伝えられていた。

本作が、キネ旬第3位でなければ、
キネ旬日本映画監督賞、日本映画脚本賞でなければ、
よくある困った日本映画の一本という感じで流せるのだが、
こんなに評価されてしまっていると、ついつい期待してしまった。
誰が悪いかといえば、
期待した私が悪い。

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