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映画評 「あつい胸さわぎ」 ~ 早くも来た 年間ベストクラスの逸品 ~ [映画評]

この映画を観たのは、まだ1月。
その段階で、年間ベストを言うのは相当に早い。
しかし、本作を上回る作品がおいそれとあるとは思えない。

いい映画はそういうものだが、
最初から最後までワクワクが途切れない。
ずっと十分に面白かったのだが、
ラストでとことんやられた。
歴史的ラストシーンとまで言いたくなるような喜びをもらった。
いいもの観た、と、思わず拳を握りしめた。

原作は、横山拓也さんという方が作・演出を務めた舞台らしい。
「朝が来る」「東京リベンジャーズ」の髙橋泉さんが脚本を担当し、
まつむらしんごさんという方が監督をされて映画化の運びとなった。
どういう経緯でこのお二人が本作に関わられたのか知る由もないが、
素晴らしい組み合わせに感謝したい。
お見事としかいいようのない仕事ぶりであった。

舞台は、和歌山県の海沿いの小さな町。
そこに暮らす母子家庭の二人が主人公。
母は工場で働き、娘は芸術大学に通う。
ほのぼの過ごしていた二人だったが、
娘が“若年性乳がん”と診断され、大きく揺れ動く。
しかし、終始ユーモアに貫かれていて、お涙頂戴系の難病ものではまったくない。
登場人物一人一人に意味があり、
一つ一つのセリフもしっかり磨かれている。

母親を演じるのは常盤貴子さん。
娘役に吉田美月喜さん。
この二人の頑張りが映画を引っ張ったことはもちろんなのだが、
脇も素晴らしかった。
常盤さんの友人役の前田敦子さんが持ち味を発揮しきっておられ、
吉田さんが焦がれる奥平大兼さんは「MOTHER マザー」「マイスモールランド」に続き、驚異の傑作3連続出演となった。
そして、吉田さんの幼なじみ役の佐藤緋美さんは、ずっと忘れないと言いたくなるほどの存在感を放たれている。

本作は、それほど多くの劇場では上映されていない。
また、宣伝もそれほどされていない。
そのため、見逃す方も少なくないと思う。
それはもったいない。
本当にもったいない。
是非ご覧いただいて、
胸をあつくしていただきたい。
この胸さわぎが広がりますように。

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