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映画評 「658km、陽子の旅」 [映画評]

第25回上海国際映画祭コンペティション部門
最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞受賞作。

「#マンホール」「私の男」の熊切和嘉監督と「バベル」の菊地凛子さんが、
22年ぶりにコンビを組んで作り上げた映画である。
「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019」脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介さんの脚本が原案。

映画サイトには、
「就職氷河期世代である42歳の独身女性・陽子は、人生を諦めてフリーターとしてなんとなく日々を過ごしてきた」
との設定が書いてあるが、
就職氷河期世代であることも、フリーターであることも、人生を諦めていることも、なんとなく日々を過ごしていることも、
わかるようには描かれない。
そう言われて、そういう設定だったんだ、とわかる感じ。

タイトルになっている658㎞は、東京から青森までの距離。
父の訃報を受け、従兄の車で葬式に向かうことになったのだが、
従兄と途中ではぐれてしまい、
スマホも折悪しく壊れていて、
所持金もなく、
ヒッチハイクで向かわざるを得なくなる。

コミュ障で人とうまく関われない主人公が、
いろいろな人と交わるなかで変わっていく姿が描かれるのだが、
そのきっかけとなったはずの大切なところが映されていないのでなんともピンと来ない。
最後の最後は自分の足で歩くことになったのだが、
それもなんだか意味不明。
どうしてそんな中途半端な設定に。

どういうわけなのか、ヒッチハイクの過程がほぼすべてもやもやした感じ。
不親切な人が適当に下ろすのはわかるが、
親切なはずの人まで、
「なんでそこ」
みたいなところで。
頭に?マークが浮かびまくる。

菊地さんの演技は確かに強力だが、
映画として、また脚本として評価された理由が今一つわからず。
設定がはっきり伝わってこないので、
演技の強力さが強力であるだけとしか伝わってこない。

震災地へヒッチハイクのような形で向かう映画としては、
諏訪敦彦監督の「風の電話」がある。
個人的には「風の電話」の方が好きだ。

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