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映画評 「愛がなんだ」 [映画評]

「愛がなんだ」。
知っている人は知っていることだが、この映画、ヒットしている。
公開週に観に行こうと思ってテアトル新宿のサイトを見たら、ほぼ全回満席。
その勢いは平日も止まらず、
「テアトル新宿では『この世界の片隅に』以来の高稼働」
なのだそうだ。
https://movie.jorudan.co.jp/news/topic_42414/
もちろん、「コナン」やら「アベンジャーズ」やらと比べると規模は全然違うが、異例のヒットになっていることは間違いない。

ヒットの理由は何だろう?
恋愛映画の旗手、今泉力哉監督作品、
と言われてもよく知らないし、
岸井ゆきのさん主演、共演に成田凌さんというキャストも、失礼ながらそれだけでヒットにつながるとは思えない。
私の知らないところで綿密なプロモーションでも行われ、それが功を奏したのだろうか。
なんかそうでもない気がする。
ヒットって、不思議だ。

普通に行くと満席になりそうなので、あらかじめネットで予約して鑑賞。
劇場に着くと、案の定満席だった。

描かれるのは不思議な男女関係。
強烈な片想いをする女の子が主人公。
女の子に想われるのはどうにもならない男で、この男がまた誰かに片想い。
主人公の女友達には恋人未満の男がいて、この男もいわば片想い。

学生の片想いではなく、20代後半という設定だから、
片想いといっても一途なだけではなく、
キラキラもしていない。
ただ、どこか浮世離れもしていて、
ドロドロもしていない。
こんな奴いないよ、
とツッコミたい気持ちがある一方で、
自分にもこういう面がある、
と共感する気持ちも生まれる。

映画でも小説でも散々題材になっているが、改めて「愛って何なんだ」。
この映画のテーマもそこにある。
タイトルでそう言っているのだから間違いない。
相思相愛じゃなきゃ愛じゃないのか?
勝手に好きじゃ愛じゃないのか?
愛するに値するような人間じゃなきゃ愛しちゃいけないのか?
結婚目指さなきゃ愛じゃないのか?
傷つけ合わなきゃ愛じゃないのか?

もちろん、愛の形はいろいろある。
この映画でも、「これが愛だ」などということは語られない。
しかし、愛の形はいろいろある、
などという手あかのついた結論が映画で示されるわけではない。
それについては、勝手に考えろということだろう。

主演は、岸井ゆきのさん。
どうしようもない女性の役を、等身大で演じられた。
魅力的に見えるシーンはほとんどないが、役者として映画を引っ張られた。
共演の成田凌さんは、このところいろいろな映画で見かける。
どこか飄々として酷薄な感じが役にはまっていた。
印象的だったのは、情けない男役の若葉竜也さん。
なんだか引き込まれるものがあった。

「愛がなんだ」は、この春、映画ファンなら押さえておきたい一本。
何故ヒットしているのか、その理由は私にはよくわからなかったが、ちゃんと作られている映画であることは伝わってきて、嬉しかった。
日本映画らしい日本映画であり、時間がゆるゆる流れる。
この曖昧な時の流れも、時代の空気に合っているのだろう。
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