SSブログ

EUのイタリアへの制裁は意味があるか [経済を眺める楽しみ]

EUには、
「安定・成長協定」
なるものがある。
これは、EUが経済通貨同盟を促進、維持していくための財政政策の運営に関する合意であり、加盟国はこれを守らないと一定の制裁を課されることになる。

守るべき具体的な基準は、
・単年度の財政赤字額の比率が国内総生産 (GDP) の 3% を上回ってはならない。
・国債残高が GDP の60%を下回っている。
というものである。
日本の場合、国債残高がGDPの200%にも達しようとしているので、完全にアウトである。

EUの立場からすれば、単一通貨を使っているのだが、その通貨の信認を揺るがすような財政運営をしてもらいたくない、ということになるだろう。
しかし、経済が苦しい状況に追い込まれた加盟国からすれば、この協定は大変な足かせになる。

景気が悪いとき、通常は財政出動によって経済を刺激しようとする。
そうなると需要が喚起されるし、
インフレになって通貨の価値が下がれば、
輸出が伸びる呼び水になる。
そうやって景気が持ち直す。
それがEUでは一定の範囲内でしか許されていない。
ドイツ以外の不満がたまるわけである。

イタリアのサルビーニ副首相が、EUから30億ユーロ、約4,000億円にも上る制裁金を課される可能性があると述べた。
そして、同副首相は、
「EUの財政ルールは時代遅れで不公正」であり、
「全力で戦う」
と表明されたのだという。

EUからすれば、
「約束は守れよ」
ということになるだろうが、
イタリアからすれば、
「経済が低迷し国民が困っているときに、手をこまねいて見過ごすわけにはいかない」
となるだろう。
はたから見ていると、
「経済・財政が苦しい国から、さらに4,000億円徴収するってなんだよ」
と率直に思う。

それでもEUは続くのだろうが、各国の不満がかなり溜まっているのも事実であろう。
あまりルールにこだわり過ぎると、本当に崩壊しかねない。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事