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映画評 「空母いぶき」 [映画評]

本作に総理大臣役として出演されている佐藤浩市さんが、
「最初は絶対やりたくないと思いました(笑い)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」
「ストレスに弱くて、すぐにおなかを下してしまうっていう設定にしてもらったんです」
と発言されたことに対し、百田尚樹さんや高須克弥さんが噛みついてひと騒動になった。
映画の注目度が上がったという点で、宣伝効果はあったと思うが、佐藤さんの登場シーンではどうしても気になってしまう。
純粋に楽しめなくなったのは、やはり少し残念。

佐藤さんの発言が波紋を広げたように、日本が戦争について描くと、どうしても政治的信条と絡まり、表現に制約がかかってしまう。
本作も、原作が大幅に改編されているらしい。
そのため、
相手は何を求めているのか、
何故相手が攻撃をしかけてくるのか、
など根本的な部分がうにゃうにゃになってしまっている。
当然、原作ファンからの怒りの声は強い。

戦闘のオチも、
空母に乗り合わせた設定の記者による報道の伝わり方も、
どちらも甘々な収め方で、こちらも興醒めという意見が少なくない。
さらに、途中途中で挟まれるコンビニエンスストアの様子が、全く効果を上げていない。

そのように、傷の多い映画なのだが、娯楽作として見るとそれなりに楽しめた。
緊迫感はあったし、
極限状況での人間関係も興味深く描けていた。
あまり真面目に見過ぎないのが、本作を楽しむコツである。
そういう映画なのだから。
総理はあんなじゃない、自衛隊はあんなじゃない、
国連はあんなじゃない、中国はあんなじゃない、
などを真面目にとらえてはいけない。
娯楽作なのだから。

西島秀俊さんと佐々木蔵之介さんが、正面からやり合う形で演技合戦。
ここが最大の見どころである。
佐藤浩市さん演じる首相に、あまり見せ場はない。
本田翼さんが空母に乗り合わせた記者役で出演。
最後に寝顔のサービスショットがある。

「空母いぶき」は、自衛隊の戦闘を取り上げた娯楽作。
リアリティは薄く、
作品の詰めも甘いが、
映画としては、そこそこ楽しめる。
物足りない人も少なくないだろうけれど、あまり多くを求めてはいけない。

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