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映画評 「ソワレ」 [映画評]

ソワレ、とは、「夜会」「夕べ」といった意味のようだ。
本作は夜の物語ではないが、全体を覆うはかない感じが表れている。

若い二人の逃亡劇を描いていて、
繰り返し取り上げられているテーマである。
映画を作る人間には魅力的に映るのだろう。
そうした意味での目新しさはないが、
演出や演技の熱量が高く、画面に引き寄せられる。
日本映画らしい日本映画で、ちゃんと作っている。
作り手が真摯に向き合っていることが伝わってくる。
それが気持ちいい。

逃げる必要も、
逃げる理由も、
この二人である意味も、
ほとんどないままに逃亡は始まる。
そんな関係だからこそのつながりがあり、衝突があり、破局もある。

舞台となっている和歌山の風景が活きている。
山も、海も、
梅干しも、
どこか寂しい街の様子も。

主演は、村上虹郎さんと芋生悠さん。
村上さんは、映画俳優らしい雰囲気を持つ貴重な存在。
本作でも、危険なのに弱弱しい存在が活きていた。
これからの映画界を引っ張っていってほしい。
芋生さんは、このところグイグイ来ている女優さん。
今年に入ってから観た「37 Seconds」「#ハンド全力」でも、印象深かった。
2020年に彼女が出演したこの3作を観られた私はラッキー。
本作では、可愛さや美しさはぐっと抑え目。
ターニングポイントとなる作品かもしれない。

「ソワレ」は、しっとりと胸に届く小品。
若い二人の懸命さが、映画の登場人物と実際の俳優像と重なり合って伝わってくる。
傑作というのとは違うが、作られるべき作品だと感じられた。

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