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書評 「公務員の新人・若手育成の心得」 [読書記録]

4月。
職場に新人がやってくる季節である。
役所でももちろん同様である。
新しい人生が始まる新人たちはもちろん、迎える同僚にとっても新鮮な日々が始まる。

新人が来れば、通常は誰かが指導役として付く。
そして、いわゆるOJT(On the Job Training)が始まる。
OJTとはなにかWikiに聞くと、
「職場の上司や先輩が、部下や後輩に対し具体的な仕事を与えて、その仕事を通して、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導し、修得させることによって全体的な業務処理能力や力量を育成する活動である。」
とされている。
意図的・計画的・継続的、ということがポイントだろう。
つまり、単に仕事をやらせて、足りないところを指摘しているだけでは、OJTとは言えない。

成り行きに任せていても、伸びる人間はいる。
ひょっとしたら、成り行き任せが功を奏する可能性もなくはない。
しかし、それはあくまでもたまたまである。
人を育てる、ということは非常に重要な任務であり、たまたまに任せていいはずがない。

そこで、本書「公務員の新人・若手育成の心得」の出番となる。
帯の言葉を借りれば、この本は、新人・若手を、
『どのように育成するのか、
 なぜそのように育成するのか』
ということに正面から向き合う本である。
それほど厚い本ではないのだが、実に読みごたえがある。
育成を担うことになった職員に参考になることはもちろん、
その職員の上司にも、
さらに育成される立場の新人にとっても参考になる内容が満載である。

著者の堤直規さんは、小金井市に務められている現役の地方公務員。
新人の育成に真正面から向き合って来られた方だからこその経験に裏打ちされた内容になっている。
これまでにも「公務員1年目の教科書」「公務員『異動』の教科書」などの著作があり、
文章の巧みさに定評のある方だが、本書ではそれに熱が加わっている感がある。

4月から3月まで、それぞれの時期にするべきこと、
初級編、中級編、応用編とレベルを経る中で考えるべきこと、
が整理されているので、いつ、誰が開いても参考になる。
また、具体的にするべきことと、
こういう思いで向き合うべきという、
実務と気持ちの問題もしっかりカバーされている。

深掘りしたいときの参考書籍が、流れの中で紹介されているのも有難い。
著者がこうした数多くの書籍を読まれ、それを血肉にされ、実践されているのだと思うと、
人材育成に関する深い洞察の源が見えてくる。

どんな人材を採用するかは人事部門に帰するところが大きいが、
入庁した人間をいかに育てていくかは、個々の現場にかかっている。
そして、その意味や役割は、ますます大きくなっている。
本書には、
これから人材育成に関わる人にも、
人材育成に迷っている人にも、
さらなる充実を目指している人にも、
もっと成長したいと思っている人にも、
刺さる内容がふんだんに盛り込まれている。

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