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映画評 「街の上で」 [映画評]

2019年に「愛がなんだ」で評判を取られた今泉力哉さんの監督作品。
その後も、コンスタントに作品を発表しておられる。
今年に入ってからも、「あの頃。」に次いで2本目の鑑賞となる。

タイトルの「街の上で」にはいろいろな解釈があり得ると思うが、
地理的な意味での「街」としての舞台は下北沢。
映画の中で起きる出来事も、すべて下北沢内。
狭い範囲での映画である。
もちろん、わざとそうされている。
公開された又吉直樹さん原作、行定勲さん監督の「劇場」という映画も下北沢が舞台だったが、
こちらはもっと広がりがあった。
今作は、小さなお話。

ストーリーは、下北沢の古着屋で働く青年が、初めての恋人に浮気をされて、振られ、
そんななか、学生の卒業制作の映画への出演を依頼され、
頑張って演じてみたが緊張してうまくいかず、
撮影の打ち上げの日に、撮影に関わっていた女性と恋バナに花が咲き、
といった感じ。
どうでもいいと言えば、どうでもいい。
小さなお話。

狭い世界の、
古本屋さんや古着屋さんや飲み屋さんなどで暮らしは完結し、
人間関係もその輪の中に留まる。
一人ひとり懸命に生きてはいるが、
小さなお話。
だからこそ、濃密に伝わるものがある。
天下国家にはほど遠いが、だからこそのリアルがある。
個人的には、「劇場」にあったような熱が好きだが、
こちらはこちらでありである。

主演は、若葉竜也さん。
今泉監督作品には、「愛がなんだ」「あの頃。」に続く出演。
気が弱く、不器用な若者を素直に演じられた。
共演の女優陣に、穂志もえかさん、古川琴音さん、萩原みのりさん。
昨年公開された私の大好きな映画「君が世界のはじまり」で印象的な演技を披露された中田青渚さんが出られていたのが嬉しかった。

「街の上で」は、今泉監督らしい小品。
都市に暮らす若者たちのおとぎ話。
そこら中にありそうだが、実際には絶対にない話。
クスリとさせられるシーンもちらほら。
不思議な雰囲気にふんわり漂うことができる。

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