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映画評 「ヘルドッグス」 ~ 圧巻の映画体験 ~ [映画評]

原田眞人さん監督作品。
原田さんの作品で個人的に印象深いのは、1999年の「金融腐蝕列島〔呪縛〕」。
もう何十年も前の映画なのに、いまだにいろいろなシーンを思い出す。
その原田監督は73歳。
大御所と言われていい年齢である。
しかし、安住する気配はまるでない。
本作「ヘルドッグス」に漂う緊張感は、まるでデビュー作。
脚本も担当されているのだから、まさに原田さんの世界。

潜入ものに求められるハラハラ感がたっぷりあるのはもちろん、
ストーリーも、
人物像も
しっかり描き切られていて、
最初から最後までヒリヒリしながら、存分に楽しめる。
一癖も二癖もある登場人物が皆生きている。

人が死ぬ映画や暴力シーンがある映画が苦手な方はともかく、
とにかくすごい作品なので、迷わず劇場に足をお運びいただきたい。

今作に始まったことではないが、主演の岡田准一さんが強烈。
岡田さんのアクションが映画の説得力を違う次元に押し上げている。
岡田さんが元気なうちに(もちろんまだまだ元気だが)、いろいろな作品を撮ってもらいたい。
相棒役の坂口健太郎さんも、懸命に食らいついておられた。

いい映画だからそうなのか、そうだからいい映画になったのか、
どっちがどうなのかわからないが、その他の俳優陣も素晴らしい。

ある種ばくち的なキャスティングだっただろうMIYAVIさんがいい。
組長役という座を引っ張るような存在であり、周りはベテラン俳優揃い。
難しい役回りだが、場違い感が逆に生きていた。
役としても生粋のヤクザとは違う存在であり、監督はそこを狙ったのだろう。

北村一輝さんも強烈な存在感。
「沈黙のパレード」ではへんてこな芝居をさせられていて気の毒だったが、本作では水を得た魚。
酒向芳さんも「沈黙のパレード」に出演されていたが、本作では警察側。
酒向さんのこのところの活躍は目覚ましく、映画賞などに絡まれるかもしれない。
原田監督作品の「燃えよ剣」に続いて、はんにゃの金田哲さんが出演。
イキっている割に小心者、という役が似合う。
松岡茉優さん、大竹しのぶさんもノリノリ。

ワーワー騒ぐシーンが多く、
暴力シーンもふんだん。
しかし、ただのドンパチ映画ではない。
岡田さん演じる兼高という男の存在に、
相棒や組長が魅せられていく過程も描かれる。
最初から最後まで緊張感が持続する脚本と演出の妙に酔う。
圧巻。

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