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映画評 「四畳半タイムマシンブルース」 [映画評]

アニメ化された森見登美彦さんの小説「四畳半神話大系」と、
実写映画化された上田誠さんの戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が、
『悪魔的融合』を果たした作品。

「四畳半神話体系」のアニメはチラチラ横目で見て、
なにやらすごい作品やってるぞ、と思った記憶がある。
「サマータイムマシン・ブルース」はなぜか観ていない。
大好物の本広克行監督作品なのに。
しかし、確かにこの二つが重なったらちょっと悪魔的かも。

本作は観る人によっては辛気臭い話だろう。
いい若いもんが、どうでもいいことでああだこうだとやり合っている。
そして、延々と説明口調が続く。

しかし、このノリがいい。
慣れて引き込まれてしまうと、延々続いて欲しくなる。

登場人物がそれぞれに愛おしい。
主人公の「私」の優柔不断さは、世の中の男の共感を集めること必至だろう。
「私」が恋する明石さんの可憐なこと。
他人の不幸で飯が喰える小津の邪気のないこと。
泰然自若とした樋口氏のようになりたい。
ちょっとお姉さんの羽貫さんは憧れの存在。
騒々しい城ヶ崎氏は、はい、そんな人いますよね。
未来から来た田村くんののほほんとした感じも好ましい。

タイムマシンであっち行ったりこっち行ったりするので、
話はややこしい。
真面目に考えるとわけがわからなくなってくるが、そこはそれ、流れに身を任せて。

京都の風景が心にしみる。
鴨川の河原が、うつろいゆく青春時代の一瞬を留めおいてくれているように見える。
浮かれポンチの登場人物たちが、ふと自分たちの居場所を確かめる。

しかし、一切は過ぎていく。
タイムマシンがあろうがなかろうが、私たちは私たちの日々を過ごすしかない。
私たちなりの選択で。

最後、なんかキュンとなってしまった。
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