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映画評 「truth 〜姦しき弔いの果て〜」 [映画評]

本作は、映像職人、堤幸彦さんの監督作品50本目という記念すべき映画。
大作をいくつも手掛けてきた堤監督が、
区切りの作品にして初の自主制作。
撮影期間は2日間、
予算は700万円、
文化庁の支援金、
という異色作である

出演者は3人の女優のみ。
そのうちのお一人、広山詞葉さんが発起人となり、
役者仲間の福宮あやのさんと河野知美さんに「自分たちで映画を作ろう」と声を掛け、
堤監督に相談したところ、監督を引き受けてもらえたのだという。

広山さんは、
「本当にコロナで仕事が全くゼロになって、何もすることがなくなって。自分にとっての生きるとは何かを考えたとき、表現をしなければ自分にとって生きていると言えないなと思ったときに、文化庁の助成金を見つけまして」
と話しておられる。
コロナ禍、こういう映画作りのストーリーには心動かされる。

しかし、それと作品の評価は別物。

三人の女優さんによる演技合戦は見応えがある。
あっち行ったりこっち行ったりの激しい会話劇なのだが、
お芝居の力で引き付ける。

ただし、心の奥までグイグイ来るかというと、それには至らない。
コメディであるのであまり細かく突き詰めるのは野暮だが、
設定はわかりやすく陳腐。
三人は一人の男に翻弄されていたのだが、
リアリティはなく、共感するには至らない。
かといって、爆笑できることもなく。

密室劇で、
お芝居を観ている感覚だが、
これは映画。
で、映画として観たときに満足度が高いかというと、それはなんとも。
懸命に演じられた役者の皆さんのお気持ちは受け取るが、
観終わったときの満腹感は希薄。
え、これで終わり、
という感じ。
小さな小屋で演劇として観られたら別の印象なのだろうけれど。

「truth 〜姦しき弔いの果て〜」は、作られた方の気概が伝わる作品。
その点は嬉しいが、
その点を割り引くと、さて。

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