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映画評 「死刑に至る病」 [映画評]

本作は、白石和彌監督によるサイコスリラー。
高く評価された「彼女がその名を知らない鳥たち」以来の阿部サダヲさんとのタッグ。

阿部さんが演じるのは、20人以上もの若者を残虐に殺害した死刑囚。
なんとも極端な役柄だが、陳腐になることなく演じ切られている。
阿部さんにとっても簡単な役ではないと思うが、さすがであった。

本作を観て、「羊たちの沈黙」を思い出される方は少なくないだろう。
牢獄での面会でいろいろなヒントを与えていく流れは同じ。
本作では、凝った演出が展開され、密室での緊迫感を高める。

設定などは原作にのっとっているのだとは思うが、
極端過ぎて、やや現実感が希薄になるのが残念。
阿部さんがいくらなんでもサイコ過ぎる感があるし、
狭い範囲でこれだけ次々と事件が起きたらえらいことだろうし、などなど。
映画なのだし、そんなことを考え過ぎてはいけないとは了解しているが、それにしても。

白石監督作品ということで大いに期待したのだが、
そこまでの衝撃作ではなかった。
衝撃的なシーンは何か所もあるのだが、
それは絵面だけのことで。

ただ、ラストシーンは印象的。
それまでのもやもやが解消されるようなパンチの効いた終わり方だった。

「死刑に至る病」は、なんとも微妙な作品。
心理的にじわじわくる面もある一方、
「へ?」と感じてしまうような安易な設定や展開もある。
私は白石監督作ということで期待を高め過ぎてしまったが、
白紙で観れば、そこそこなのだろうか。

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