SSブログ

映画評 「アンダーカレント」 [映画評]

コンスタントに作品を発表される今泉力哉監督の新作。
ちなみに「アンダーカレント」には、「底流、下層流」といった物理的な意味のほか、
「根底にある抑えられた感情」といった意味もあるらしい。

恋愛映画の名手、と言われることのある今泉監督だが、
本作は恋愛映画ではない。
ミステリー的な要素も含みつつの人間ドラマである。

謎の男がふらりとやってくるところから物語が始まる。
しかし、この男だけではなく家業の銭湯を継いでいる主人公の女性にも暗い影がある。
失踪してしまった夫にももちろん影があり、
3人のアンダーカレントが徐々に明かされていく。

主人公を演じる真木よう子さん、謎の男を演じる井浦新さんともに、
抑えた演技で映画に引き込む。
困りものの夫役の永山瑛太さんがいい味。
「怪物」「福田村事件」もあり、今年は瑛太さんの年か。
探偵役のリリー・フランキーさんが、いつもながらいい。

犬を散歩するシーンがあるのだが、
犬が可愛かった。
おそらく老犬に近いのではないかと思うけれど、
飼い主を気遣うようにチラチラ見る姿が映画とマッチしていた。
偶然なのか、何度も撮り直した結果なのか、演技できる犬なのか。

本作の欠点は、ちと長いこと。
143分が退屈には感じられなかったが、あと25分短ければずっといい作品になっただろうとは思う。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事