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映画評 「ブリグズビー・ベア」 [映画評]

CGやら何やらの技術が発展して、今や映画で表現できないことはないような気がする。
しかし、金をかければ、仕掛けが派手なら、観客が喜ぶというものではない。
人の心が動くのは、作り手の熱が伝わったときである。
人が驚くのは、作り手の発想に無限を感じるときである。

現在、日本の映画界を席巻している「カメラを止めるな!」は、作り手の熱が観客に乗り移り、ポンデミック(パンデミックではない。なぜポンデミックというのかは、映画をご覧ください)を起こしている。
この「ブリグズビー・ベア」も、なんとも言えない空気を持つ映画であり、作り手の熱が伝わってくる。
同じ時期にこの二作が公開されているのは、もちろん偶然なのだろうが、なにやら不思議なものを感じる。

公式サイトに掲載されているあらすじはこんな感じ。

ジェームスは、外気から遮断された小さなシェルターで、両親と3人で暮らす25歳の青年。子どもの頃から毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を見て育った彼は、「ブリグズビー・ベア」の番組研究に勤しむ毎日を送っていた。
ある日、警察がジェームスを連れ去り、両親は逮捕されてしまう。
両親だと思っていた2人は、25年前にジェームスを誘拐し、隔離して育てていたのだった。
「ブリグズビー・ベア」をジェームスの教育のためだけに作っていた2人は逮捕されてしまったため、今後新作ビデオが届かないことに落胆する彼だったが、自身で映画版「ブリグズビー・ベア」を撮り、その手でシリーズを完結させることを決意する。

随分と物語の核心に触れるようなことまで書かれているが、映画会社としては、ストーリーの大枠が知られても、映画の面白さが減じられることはないと考えているのだろう。
実際、大まかなストーリーを知っていた私も、十分に楽しむことができた。
どんでん返しで驚かせる映画ではなく、感情の機微を伝える映画なのだ。

かなりぶっ飛んだ設定だが、
ものを作る喜び、
ものを作る苦しみ、
ものを作る怖さ、
などがきっちり表現されていて、映画ファンならずとも共感できると思う。

やや終盤が甘きに流れた感があり、もう一声なんとか、と思わないわけでもないが、それでも十分楽しませてもらえた。
アメリカ映画というと、どうしても大作に目が行くが、こうした小品の中に見逃せない作品があると再認識した。

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