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映画評 「検察側の罪人」 [映画評]

原田眞人監督の社会派映画。
原田監督のこの系統の作品では、「金融腐蝕列島〔呪縛〕」が印象深い。
椎名桔平さんが演じた銀行員が、会社を辞める覚悟を決めてネクタイを投げ捨てるシーンがカッコよかった。
この映画の原作は、雫井脩介さんの小説だが、原田監督が脚本も手掛けているから、映画は映画として観た方がよさそうである。

前半は、快調だった。
いかにも映画っぽいオープニングも効いていたし、展開の速さも、映像も心地よい。
木村拓哉さんと二宮和也さんの対決に注目が集まっているが、
酒向芳さんや松重豊さんらが固める脇も見せ場十分。
これは傑作ではないかと期待が高まった。
しかし・・・

中盤まで、「ううむ、見事な映画を作られた」と感心していたのだが、後半はガラガラと崩壊。
主要登場人物が次々と意味不明な行動を突飛に取り始め、物語の説得力は銀河系のかなたに消えていった。
もったいない。
原作どおりの展開にすると2時間の尺に収めるのが難しいと考えたのだろうか。
しかし、端折ってはいけないところを端折っているから、登場人物の苦悩が伝わらず、ひたすらエキセントリックな人たちのハチャメチャな行動を見ている塩梅になる。
正義の体現者であるはずの木村さん演じる検事は大暴走、
それを止めるはずの二宮さんもつられて大暴走。
冤罪を止めようとする吉高由里子さん演じる事務官も、説得力の低い行動に終始。
山崎努さんの演じる大物弁護士の唐突な登場、
木村さん演じる弁護士と同志のはずの政治家の意味不明の行動など、
まあなんともはや。
なんであの前半で、こんなグダグダな後半になってしまうのか。

役者陣は奮闘。
原田監督の作品では、役者のカッコよさが引き立つ。
何かにつけてケチをつけられることの多い木村拓哉さんだが、とにかくカッコいい。
あれだけカッコよければ、まあいいではないかと思える。
二宮和也さんもしっかりした演技。
しかし、特に後半、妙な演出が多く、あれでは誰がどう頑張っても。

それでも「検察側の罪人」は、観るに値する映画だと思う。
重厚な社会派映画であり(後半、ペラペラになってしまうが)、しっかり撮られている。
こういう映画も作ってほしいし、それを観に行ってほしい。
キムタク、ニノきっかけでいいので映画に触れて、ほかのも観てみようかしら、となってもらえたら嬉しい。
ツッコミどころは満載だが、観ないとツッコめない。

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