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映画評 「キャラクター」 [映画評]

デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」という映画が大好きだ。
猟奇的な連続殺人を描いた映画だが、
怖がらせたり気味悪がらせたりするだけではなく、
練り上げられた台本、
隙の無い演出、
俳優陣の見事な演技、
などなどに裏打ちされた素晴らしい作品だった。

「セブン」以降、似たような作品は数多く作られたが、超える作品はないように思う。
肉薄する作品も見当たらないのではないだろうか。
多くの映画は、
犯行の意味、
犯行の可能性、
何故捕まらないのか、
何故そんなことができるのか、
といったところに穴がある。
大きな穴がある。
なぜそんな犯行をするのか、
という理由の方はそれぞれの解釈に委ねられるとしても(ほとんどの映画は「はぁ?」だが)、
物理的な可能性的に大きな疑問符が付いたり、
どうしてそんなことして捕まんないのといった素朴な疑問がドカンと浮かんだり、
知的・経済的・体力的にできっこないでしょと思えてしまったりすると、
映画にのめり込むことができない。
さらに、重要なのは悪役に奥行きがあることである。
それがないと、筋を追うだけになってしまう。

本作「キャラクター」は、よくできた面白い映画である。
いろいろな展開があって、終始集中して観ることができる。
意外な展開も満載である。
映像もしっかり作り込まれていて、
映画が好きな方が真摯に映画に向き合われていることが伝わってくる。

主役を演じる菅田将暉さんに狂気が宿るシーンはぞっとする素晴らしさだったし、
最後のシーンもタイトルとの相乗効果がありグッときた。
残酷な場面が多く、万人受けするかというとなんとも言えないが、
よくここまで描いたと感銘を受けた。

ただ、「セブン」に迫れたかというと・・・。
素朴な疑問がいくつも浮かんでしまい、
ずっぽり入り込むまでにはかなりの隔たりがあったと言わざるを得ない。
これは好みの問題なのだろうか。
若しくは、娯楽映画にそこまで求めてはいけないのだろうか。
求めてしまっただけに、ブスブスとした思いが沈殿してしまった。

監督は「帝一の國」「恋は雨上がりのように」などの永井聡さん。
ハズレなしの進撃が続いている。
脚本は、長崎尚志さん、川原杏奈さん、永井聡さんの連名。
金曜夕刊の日本経済新聞の映画批評欄に「息をもつかせない脚本が見事」と書かれていたとおり、素晴らしい仕事をされていた。
だけに、もう一押し欲しかった。
まあまあいい作品、ではなく、
年間ベストクラスの作品を期待していただけに。

主演は、今年も大忙しの菅田将暉さん。
さすがの演技で映画を引っ張る。
共演はFukaseさん。
Fukaseさんの演技がどうのではなく、なぜFukaseさんだったのだろうとは思った。

映画「キャラクター」は、しっかり作り込まれた面白い映画。
残酷なシーンが苦手な人には勧めにくいが、最後まで面白さが途切れない。
自分って誰だっけ、といった根源的な、ちょっと怖い疑問もわいてくる。
普通の期待をして観に行けば、普通に楽しめる。
過度の期待をして観に行けば、う~ん。

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