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映画評 「はるヲうるひと」 [映画評]

力のこもった、思いのこもった映画に出会うのは嬉しい。
「はるヲうるひと」は、一年間を通して映画のランクを付けたとき、上位に入ってくる作品であった。
佐藤二朗さん、恐れ入りました。

本作は、その佐藤二朗さんが主宰する演劇ユニット「ちからわざ」の舞台を映画化したもの。
佐藤二朗さんが、原作・脚本・監督を担当されている。
もちろん、出演も。

公表されている設定はこんな感じ。
「売春宿があちこちにある島に、3兄妹が暮らしていた。店を仕切る長男の哲雄は凶暴な性格で恐れられ、次男の得太は子分のように兄にごまをすり、長女のいぶきは長年の持病で伏せっている。そこで働く4人の遊女は哲雄に支配され、得太を見下している」

危険な香りのする設定だが、実際の作品もなかなかのハードさ。
到底テレビでは表現できない世界観である。
売春宿がメインの舞台なので、そうしたシーンもたびたび出てくる。
お父さんと娘さんで観るのはあまりお勧めしない。(そもそもいないだろうが)

エロに暴力も加わり、
息苦しい展開が続く。
最後で浄化されるかというと、そう甘いものでもない。
わずかな救いはあったが、スカッとはしない。

しかし、私は不快ではなかった。
演出する人、演じる人、スタッフのみなさん、
そうした方々の本作にかける熱がひしひしと伝わってきたからである。

やたらと絶叫する演出がちょっと興醒めだったり、
ラストシーンがちょっともったいなかったり、
ううむ、と思うところもないではなかった。
それでも、
作られるべき映画だと感じたし、
映画ファンなら観て損のない映画だと思った。

観て、気分がよくなる映画ではなく、
いやむしろ気分が悪くなる人が多い作品であり、
ネットの評価はあまり芳しくないようだ。
確かに、万人に勧められるタイプの映画ではないが、
がっつり向き合おうとする方なら、正面から組み合えるのではないだろうか。

「はるヲうるひと」は、見ていて辛くなるしんどい作品だが、
魂のこもった渾身作でもある。
気合を入れてご覧あれ。

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