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映画評 「サバカン SABAKAN」 ~ 今年の夏はコレ ~ [映画評]

夏に観て、是非その夏の間に観てほしいと思った映画は、ここ最近では、
2018年「ペンギンハイウェイ」
2020年「君が世界のはじまり」
といった作品が思い浮かぶ。
やっぱり夏の主役は子どもか若者である。
そして今年はこの映画。

「サバカン」の主人公は小学生の男子二人。
彼らのひと夏の交流が、長崎の美しい風景をバックに描かれる。
ときは1986年。
ちとデフォルメし過ぎな感はあるが、いろいろな面で今とは違う。

親には内緒で、子どもたちがあるものを見つける冒険に出る、
という設定は、映画ファンにはお馴染みのものかもしれない。
しかし、二人の子役の素朴な演技に素直に引き込まれる。
絡んでくる大人たちのベタベタしない感じも心地よい。

「またね」
という言葉が胸に沁みる。
「またね」
と言えること、
言える相手がいることの喜びが胸に来る。

この映画好きだなあ、と思いながら観ていたら、終盤に想像を超える波乱がある。
個人的にはこの波乱はない方がいいと思ったが、
この映画は監督さんが脚本も担当されているオリジナル作品。
ラストに持って行くためには、こうするのがベストと考えられたのだろう。

主役の子が号泣するシーンがある。
映画で主人公が泣くシーンはいくらでもあるが、共感できないことも少なくない。
この映画での涙は、真っすぐ伝わって来た。
そうだ、ここは泣くところだ、と思った。
思い切り泣くところだ。

草なぎ剛さんが、主役の子の成人した姿として出演。
こちらのパートは薄め。
尾野真千子さんと竹原ピストルさんが夫婦役で出演。
二人の掛け合いは楽しく、いつまでも観ていられる感じだった。
貫地谷しほりさんが子だくさん家庭のお母さんを演じる。
こちらも魅力的だった。

監督の金沢知樹さんは、脚本家、演出家、構成作家として活躍されている方で、
本作が長編映画の初監督。
すばらしい船出となった。

公開館数が少ないこともあるのかもしれないが、
地味な題材で大して宣伝もされていないのに私の観た劇場はまずまずの入り。
早くも口コミで映画のよさが広がっているのなら嬉しい。

「サバカン SABAKAN」は、今年の夏に観るべき映画。
大人に沁みる映画だが、きっと子どもが観ても楽しめる。
夏休みもあと10日。
是非劇場に。

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